生命理学科で学ぶために、高校での生物学の履修は必須ではありません。生命科学は、化学や物理、数学などの基礎知識があれば大学からでも始められる学問であり、様々な科学領域との融合こそが重要なのです。生命理学科では、様々な学問的視点から生命科学に関心を持った学生に応えるために、基礎科目から高度に専門的な講義まで好奇心の赴くまま学べるカリキュラムが組まれています。また、高度な研究能力を養うため、英語論文を読んだり要点をプレゼンするためのスキルを磨く演習や、研究の進め方や考え方を実践的に学ぶ実習などには、特に多くの時間を割いています。成績優秀者への表彰制度や、大学院講義の先取り単位認定制度があり、日本人学生に対する英国マンチェスター大学での卒業研究プログラムもあります。さらに、最先端の研究に触れることができる機会として、国内外の著名な研究者による集中講義やセミナーも随時開催しており、積極的な参加を期待しています。

学部カリキュラム/時間割

1年生

1年生では幅広い知識と教養を身につけるため、語学や文系講義も含めた全学共通教育科目の授業を受講します。生物学研究では英語も重要となるため、語学を積極的に学ぶことが望まれます。大学院進学を考えている人は、この時期からTOEICなどの英語能力試験を受けておくことを推奨します。全学共通授業には春期の生物学基礎Ⅰや秋期の生物学基礎Ⅱなど、生命理学科の教員によるオムニバス形式の講義も組み込まれており、様々な最先端の生物学研究の面白さに触れることができます。そして1年目の終わりに、各学科への分属が行われます。

2年生

生命理学科に分属された学生は、2年生では、分子生物学、生化学、細胞生物学などについて定評ある教科書を用いて基礎的な内容を学び、将来、様々な研究分野に挑戦するための幅広い知識を習得します。英語の原著論文を読んでデータを理解・解釈し、それを効果的にプレゼンテーションするトレーニングを行なう演習の授業も始まります。12名程度の少人数で実施される演習は教員との距離が近く、双方向のやり取りに大学の学問の自由な雰囲気を感じられるでしょう。

秋期からは、研究の進め方や考え方を実践的に学ぶ実験実習が始まります。実習では染色標本の作成のような古典的な実験から、植物の環境応答やホルモン応答実験、動物の行動実験、共焦点レーザー顕微鏡や質量分析計のような先端的な装置、さらにR言語を用いた統計解析まで幅広く体験できます。また、菅島臨海実験所で行なわれる4泊5日の臨海実習や、Python言語で学ぶコンピュータープログラミング実習などもあります。実験実習では担当研究室が得意とする研究手法を経験させるために、所属大学院生がティーチングアシスタント(TA)として配置され、教員と共に実験をサポートすることから、それぞれの研究室の雰囲気を知る良い機会にもなります。

3年生

3年生の春期からは専門講義が始まり、教員たちの個性あふれる研究ストーリーや、それぞれの分野の最新の知見について学ぶことができます。理学、農学、医学、薬学など出身の異なる教員がいることで、多様な研究のアプローチの仕方や独自の着眼点などを知ることができるでしょう。実験実習も春期の終わりまで続きます。また、最先端の研究に触れることができる機会として、国内外の著名な研究者による集中講義やセミナーも随時開催されます。

例年6月に研究室配属説明会があり、研究室見学や希望調査などを経て8月中に配属研究室が決まります。英国マンチェスター大学との交換留学制度を利用して、3年生秋期または4年生春期からマンチェスター大学で卒業研究ができるプログラムもあります。3年生の秋期からは研究室に配属されて卒業研究が始まり、4年生の終わりまで最先端研究の一端を担います。研究室では、卒業研究の遂行に加えて、研究の進捗状況の報告や最新論文を紹介するセミナーが毎週行なわれます。

4年生

4年生では、引き続き通年にわたって卒業研究を行ないます。G30国際プログラムで入学してきた学生も同様に研究室に配属され卒業研究を行うため、研究室によっては国際的な環境で勉学や研究を行うことができます。大学院へ進学する学生は、8月に大学院入試があります。1月下旬に、1年半にわたる卒業研究の内容を卒業論文としてまとめ、2月上旬に研究成果を理学部のホールで発表します。発表会には多くの教員や大学院生も参加し、さながら学会発表のような活発な質疑応答が行なわれます。

 

集中講義(2024年度・学部/大学院共通)

日程:6月11日(火) – 6月12日(水)
講師:田中 都(名古屋大学 環境医学研究所 講師)
題目:細胞死を起点とした慢性炎症・生活習慣病のメカニズム

日程:10月8日(火) – 10月9日(水)
講師:鈴木 郁夫(東京大学 大学院理学系研究科 准教授)
題目:ヒト固有の遺伝子と脳の進化

日程:10月15日(火) – 10月16日(水)
講師:山口 信次郎(京都大学 化学研究所 教授)
題目:植物ホルモンによる植物の生長制御

日程:10月28日(月) – 10月29日(火)
講師:工藤 洋(京都大学 生態学研究センター 教授)
題目:アブラナ科の分子生態学

日程:11月5日(火) – 11月6日(水)
講師:星野 洋輔(名古屋大学 シンクロトロン光研究センター 特任助教)
題目:進化生物学(英語講義)

日程:12月16日(月) – 12月17日(火)
講師:樽野 陽幸(京都府立医科大学 大学院医学研究科 教授)
題目:「チャネルシナプス」研究について

時間割

生命理学科コースツリー

大学院カリキュラム

生命理学領域には、基幹講座を中心に、遺伝子実験施設、菅島臨海実験所、ITbMに属するグループを合わせて26の研究グループがあり、大学院生はこれら研究グループのいずれかに所属して大学院研究を行います。所属研究グループの主指導教員1名に加えて、異なる研究グループから2名の副指導教員を選び、3名体制での研究指導を実施しています。

 

博士前期課程(M1–M2)

博士前期課程では、専門性に応じて緩やかに連携した10コースから大学院科目を学び、自身の研究テーマに加えて、大学院生に求められる科学的素養を養います。また、分野横断的な特論や集中講義により、幅の広い専門性と知識、見識を身につけます。研究室では、より高度な研究に毎日取り組みながら、研究の進め方や技法を実践的に学ぶとともに、研究の進捗状況の報告や最新論文を紹介するラボセミナーによって、プレゼンテーション能力や理解力を身につけます。副指導教員とのディスカッションの機会もあり、様々な視点からのアドバイスを受けます。M2の1月下旬に、2年間にわたる研究の内容を修士論文としてまとめ、2月上旬に研究成果を理学部のホールで発表します。発表会には全教員が参加し、学会発表と同様の活発な質疑応答が行なわれます。

 

博士後期課程(D1–D3)

博士後期課程では、研究三昧の生活を送ることができます。論文発表を前提とした最先端の研究活動を通して、研究の進め方や技法を実践的に学ぶとともに、研究の進捗状況の報告や最新論文を紹介するラボセミナーによって、国際的に通用するプレゼンテーション能力や理解力を身につけます。副指導教員とのディスカッションも年に数回行なわれ、様々な視点からのアドバイスを受けます。博士号取得には筆頭著者として英語で執筆した論文が国際科学誌へ受理されることが必要です。論文が受理されるまでには、審査コメントに従った追加実験や論文原稿の書き直しなどの過程を経る必要があり、数ヶ月から1年以上もの期間を要しますが、これを乗り越えることが研究者の第一歩としての貴重な経験になります。論文が受理されたら、その内容を含む一連の研究成果を博士論文として日本語または英語でまとめるとともに、博士論文公聴会で発表し、学位受理委員会での承認が得られれば、博士号が授与されます。