研究成果
田中良弥講師らの研究成果がScience誌に掲載されました
田中 良弥 講師らの研究グループは、遺伝子操作による行動の種間移植に成功しました。動物の行動は、種によって違っています。本研究では、脳の神経接続のパターンを決める遺伝子1個を操作することによって、A種特有の行動をB種に行わせることに成功しました。いわば、行動の進化を人為的に再現したものであり、生物進化の理解を大きく前進させる成果です。
ヒメウスグロショウジョウバエは、プロポーズの際にオスがメスにキスをして自分の飲んだ果汁をプレゼントとして口移しで贈ります。この種の脳の神経ネットワークを模倣した回路を、遺伝子操作によって同属の別種であるキイロショウジョウバエに持たせたところ、操作された種のオスが、本来は決して行わないプレゼントを贈るための行動をするようになりました。1個の遺伝子を人為的に操作して脳内の神経のつながり(シナプス)を変更し、丸ごとの行動を“種間移植”した例はこれまでありませんでした。行動が脳の中で作り上げられる仕組み、それが進化していく過程を実験的に解き明かした点が画期的であり、そのインパクトは計り知れません。本研究成果は2025年8月15日付の米国科学誌Scienceに掲載されました。