研究成果

博士課程学生のYifeng Xuさん・マシュースー特任助教・上川内あづさ教授らの研究成果がiScience誌に掲載されました

上川内 あづさ 教授、マシュー スー 特任助教、博士課程学生の Yifeng Xu さんらの研究グループは、神経伝達物質「オクトパミン」が、オスのネッタイシマカにおける聴覚器の機能を調節するメカニズムの一端を解明しました。蚊は、世界中でさまざまな感染症を媒介し、ヒトの命を最も奪っている動物のひとつです。オスの蚊は、メスの羽音を頼りに配偶相手を探すため、聴覚は配偶行動を成立させるために重要な役割を果たします。このため、蚊の繁殖を制御する新たな防除手段として、蚊の聴覚機能の利用が注目されています。これまで、私たちの「耳」に相当する蚊の聴覚器の機能は、脳からの信号で制御されることが知られていましたが、そのメカニズムには多くの未解明な点が残されています。本研究では、ネッタイシマカの聴覚器において、オクトパミンやその受容体サブタイプが多く発現することを発見しました。さらに、薬理学的実験により、オクトパミン受容体に作用する化合物や、細胞内セカンドメッセンジャーであるcAMPが、オスの聴覚器の機能を調節することを見出しました。これらの成果は、蚊の聴覚が神経伝達物質と細胞内シグナルによって柔軟に調節されていることを示しており、聴覚を標的とした新しい蚊の防除戦略の開発につながる可能性が期待されます。本研究成果は、2025年7月24日付の国際科学雑誌 iScience に掲載されました。