修士卒業生の小林竜太朗さん・大久保祐里助教・松林嘉克教授らの研究成果がNature Communications誌に掲載されました
修士卒業生の小林 竜太朗さんと大久保 祐里 助教、大西(小川) 真理 助教、松林 嘉克 教授らの研究グループは、植物が葉の窒素需要(空腹や満腹)に応じて根における窒素栄養の吸収量を調節するしくみを解明しました。窒素は植物の成長に最も重要な栄養素のひとつで、主に硝酸イオンを根から吸収していますが、その吸収は、葉からの篩管移行性ペプチドシグナルによって調節されています。本研究では、植物体の窒素需要を根に知らせるシグナルとして、既に報告していた空腹シグナルCEPD1/2/CEPDL2に加えて、満腹シグナルとしてGrxSファミリーが存在することを発見しました。さらに本研究では、根に移行したCEPD1/2/CEPDL2とGrxSが、互いに競合的に転写因子TGA1およびTGA4に直接結合することを見出しました。TGA1/4に対して空腹シグナルCEPD1/2/CEPDL2が結合すると、コアクチベーターとして窒素吸収遺伝子群の発現を促進し、満腹シグナルGrxSはコリプレッサーのTOPLESSと複合体を形成してTGA1/4に結合するため、窒素吸収遺伝子群の発現を抑制します。転写因子TGA1/4を欠損した植物は、葉からの空腹シグナルを根が受け取ることができず、需要の高まりに応じた窒素吸収促進ができないため、窒素欠乏が周期的に繰り返されるような変動窒素環境下では、葉が小さくなるなど正常に生育できません。すなわち、植物も空腹に応じて食いだめしないと変動窒素環境下では生きていけないのです。本研究成果は、2024年8月23日付の英国科学誌Nature Communicationsに掲載されました。