論文紹介

研究代表者

伊藤正樹

所 属 名古屋大学大学院生命農学研究科
著 者

Eriko Iwata, Saki Ikeda, Natsumi Abe, Asuka Kobayashi, Mariko Kurata, Sachihiro Matsunaga, Yasushi Yoshioka, Marie-Claire Criqui, Pascal Genschik, Masaki Ito
(岩田恵里子、池田早希、阿部奈都美、小林明日香、倉田真理子、松永幸大、吉岡泰、Marie-Claire Criqui、Pascal Genschik、伊藤正樹)

論文題目

Roles of GIG1 and UVI4 in genome duplication in Arabidopsis thaliana.
(シロイヌナズナのゲノム倍加におけるGIG1とUVI4の役割)

発表誌

Plant Signal. Behav. 7: 1079-1081, 2012

要 旨

  シロイヌナズナにおけるGIG1とそのパラログUVI4は、後期促進複合体 (APC/C)と呼ばれるユビキチンリガーゼ複合体の負の制御因子であることを以前の研究により明らかにしています。この論文では、GIG1に関する以前の結論を裏付けるいくつかの証拠を得ることができました。gig1変異体では、有糸分裂の異常により細胞当たりのDNA量が倍加する現象(エンドマイトーシス)が高頻度で生じますが、この変異体にAPC/C活性化因子であるCDC20を過剰発現させたり、APC/Cの基質であるCYCB2の変異を組み合わせることにより、エンドマイトーシスの頻度が著しく上昇することがわかりました。また、GIG1を誘導的に過剰発現させることにより、CYCB1;1-GUSが過剰に蓄積することもわかりました(図1)。これらの結果から、GIG1がAPC/Cを抑制することによりCYCB1やCYCB2などの有糸分裂サイクリンを安定化させて、正常な有糸分裂の進行やDNA倍加の負の制御に重要なはたらきをしていることが示唆されました。

図1.GIG1による有糸分裂サイクリンの安定化
GIG1を誘導的に過剰発現させた植物(+DEX)では、コントロールの植物 (-DEX)に比べてGUSに融合させた有糸分裂サイクリン(CYCB1;1)が過剰に蓄積していることがわかった。CYCB1;1-GUSの発現は青色の染色により示されている。別の実験により、このサイクリンのmRNA量は、GIG1の誘導により変化しないことから、CYCB1;1のタンパク質分解がGIG1により抑制されたため、サイクリンの過剰蓄積が生じたと解釈された。
研究室HP