論文紹介

研究代表者

町田泰則

所 属 名古屋大学大学院理学研究科
著 者

Sumie Keta, Hidekazu Iwakawa, Masaya Ikezaki, Endang Semiarti, Shoko Kojima, Yasunori Machida , Chiyoko Machida
(氣多澄江、岩川秀和、池崎仁弥、セミアルティ・エンダン、小島昌子、町田泰則、町田千代子 )

論文題目

Roles of the ASYMMETRIC LEAVES2 gene in floral organ development in Arabidopsis thaliana
(シロイヌナズナの花器官分化における ASYMMETRIC LEAVES2 遺伝子の役割)

発表誌

Plant Biotechnology 29: 1-8 (2012)

要 旨

  シロイヌナズナのASYMMETRIC LEAVES2AS2)遺伝子の葉の形成における役割については、多くの報告があり、葉の3次元的軸形成基づく形づくりに関わっていることが示されている。しかし、生殖成長期における機能解析の報告例は少なく、発現解析は報告されていなかった。この論文では、第一に、AS2 遺伝子の生殖成長期における発現を、in situ ハイブリダイゼーションとGUS レポーター遺伝子を用いて解析した。その結果、花序分裂組織、花芽分裂組織全体と、4つの花器官原基のすべてで発現していることがわかった(図1)。その発現の仕方は、AS2 と複合体を形成して働いている AS1(in situ による発現解析が報告されている)と基本的によく似ていたので、花器官形成においても、葉における場合と同じような分子過程で機能していると考えられた。第二に、as2 変異体とas1 変異体の蕾について、4つの花器官の長さを、成長過程にしたがって調べた。その結果、花器官形成のステージ12 からステージ14 にかけて、as2 変異体とas1 変異体では、がくと花弁の長さが短いのに加えて、各器官の間の成長のバランスが乱れていることがわかった(図2)。この表現型は、AS2AS1 が発現を抑制している class 1 KNOX に属する3つの遺伝子に変異を導入すると、抑圧された(図2)。このことは、AS2AS1 がclass 1 KNOX の発現抑制を通して、正常な花器官形成に関与していることを示唆している。これまでに、AS2 が、がくと花弁の伸長にかかわるという報告はあるが、今回の研究により、AS2AS1 が、各花器官の成長のバランスを調整していることが明らかになった。

図1.花器官における AS2p::GUS レポーター遺伝子の発現部位の解析. 詳細は本文参照.
図2.as2as1 変異の花器官の形態に対する影響と3種類のclass 1 knox 遺伝子(bp, knat2, knat6)の変異による形態異常の抑圧. A. 花序全体の形態異常と抑圧. B. 蕾の発生ステージにおける形態異常と抑圧. 詳細は本文参照
研究室HP