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  • 論文紹介【第10回論文紹介】
  • 転写因子に誘起されるオーキシンシグナル依存的制御モヂュールは、
    造形的細胞分裂において、微小管の配向と細胞分裂面の切換えをしている

論文紹介

研究代表者

町田泰則

所 属 名古屋大学大学院理学研究科
著 者

Pankaj Dhonukshe, Daan Weits, Alfredo Cruz-Ramirez, Simon Tindemans, Eva Deinum, Kalika Prasad, Klementina Kakar, Ari Pekka Mähönen, Chris Ambrose, Michiko Sasabe, Guy Wachsmann, Marijn Luijten, Tom Bennett, Yasunori Machida, Renze Heidstra, Geoff Wasteneys, Bela Mulder and Ben Scheres
(パンカジ・ドヌシュ, ダーン・ウェイツ,アルフレド・クルス-ラミレス, シモン・ティンデマン, エバ・デイヌム, カリカ・プラサド, クレメンティナ・カカル, アリ・ペッカ・メヘネン, クリス・アムブロス, 笹部美知子, ガイ・ワックスマン, マリン・リュッテン, トム・ベネット, 町田泰則, レンズ・ヘイドシュトラ, ゲフ・ ワステニース, ベラ・ムルデール, ベン・シュヘーレス)

論文題目

Transcription factor triggered auxin signaling dependent module  switches microtubule array orientation and cell division plane during formative cell divisions
(転写因子に誘起されるオーキシンシグナル依存的制御モヂュールは、造形的細胞分裂において、微小管の配向と細胞分裂面の切換えをしている)

発表誌

Cell 79: 569-581 (2012)

要 旨

  植物の発生において、細胞分裂面の方向を決める仕組みを、分子レベルから理解することは、極めて重要である。これまでに、シロイヌナズナの根の幹細胞・始原細胞における細胞分裂は、PLETHORE (PLT) と呼ばれている転写因子様の蛋白質によって維持されていることが知られていた。PLT 遺伝子の発現は、オーキシンにより制御され、一方で、オーキシンの分布パターンは、胚形成や側根形成及び主根における細胞分裂面の切り換えに関連していることが知られていた。さらに、培養細胞を用いた実験で、オーキシンがpreprophase band (PPB) と細胞分裂面の方向を変換することも知られていた。しかし、オーキシンが細胞分裂面に対してどのように影響しているのか、またこのような過程が、幹細胞・始原細胞からの細胞分化をともなっている細胞分裂(Formative cell division: ここでは造形的細胞分裂と呼ぶ)を支配しているのかどうかは、不明であった。
 この論文では、図1にまとめたように、シロイヌナズナの根の幹細胞の周辺で、オーキシンシグナルによって発現誘導された PLT が、何らかの経路を経て最終的に微小管結合蛋白質である MAP65 の遺伝子の発現を誘導して、細胞分裂面の方向性を変換していること(図2)を報告した。さらに、MAP65 は、表層微小管の構築に関わっている微小管結合蛋白質の一つである CLASP の表層への局在を誘導し、これがM 期以前に微小管の成長を誘導し、その配列の方向性を切り換え、PPB の方向と細胞分裂面の方向を決定することを示した(図1)。

図1.オーキシンーPLETHORA-MAP65-CLASP 経路による細胞分裂面の切り換え
図2.根の表皮 (e)/側面根冠 (l) 始原細胞における並層分裂 (Pri) の制御. (A) 野生型の根では、始原細胞で並層分裂 (Pri) が起こり、表皮細胞 (e) と側面根冠細胞 (l) を産み出す。(B) plt1 plt2 二重変異体では、始原細胞が垂層分裂 (Anti) した。(C, D) map65-1 map65-2 の二重変異体と MAP65 の RNAi ノックダウンでも垂層分裂をした。 (E) MAP65-2 を過剰発現すると、並層分裂が繰り返された。この結果は、図1の制御モデルを支持する。
研究室HP