単子葉類Asparagus 属の植物は、本来の葉が鱗片状に退化しており、その代わりに側枝が発生する位置に「仮葉枝」と呼ばれる葉状の器官を有する。私たちはこれまでに、仮葉枝が側枝の変形であり、葉の発生に関わる遺伝子ネットワークが側枝にco-option(転用)されることで葉状の形態となっているというモデルを提唱してきた(Nakayama
et al. 2012 Plant Cell:第9回論文紹介参照)。しかし、その転用された遺伝子ネットワークの全体像は明らかになっていない。そこで、その一助とするためにAsparagus
属の一種であるA. asparagoide の仮葉枝において、葉での発現が既に確認されているCRC/DL
遺伝子の相同遺伝子の発現解析を行なった。
その結果、CRC/DL 遺伝子の相同遺伝子であるAaDL 遺伝子は、葉原基の維管束において発現が見られる一方で、仮葉枝のいかなる発生ステージにおいても発現が確認されなかった。この結果は、葉の発生に関わる遺伝子ネットワークの全てが丸ごと仮葉枝に用いられているわけではなく、その一部のみが転用されているという可能性を示す(図1)。今後はRNA-seq等を用いた網羅的発現解析を行なうことで、転用された遺伝子ネットワークの全貌を明らかにすることに加え、転用が一部に限られていた場合は、なぜ一部なのかという点を明らかにすることが課題である。
図1.Asparagus 属の仮葉枝の獲得の際に転用された葉の発生に関わる遺伝子ネットワークのモデル図.
葉の発生に関わる全ての遺伝子ネットワークのうち、その一部のみが仮葉枝の発生に転用されたようだ.
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