著 者 |
Nozaki, M., Sugiyama, M., Duan, J., Uematsu, H., Genda, T.,
Sato, Y.
(野崎 守、杉山 宗隆、段 俊、植松 広、源田 竜也、佐藤 康)
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要 旨 |
高温条件下でリグニンの異常な蓄積と成長不全を示すシロイヌナズナの温度感受性変異体lig を単離し、解析を行った。lig
変異をポジショナルクローニングにより同定し、UDP-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)生合成の必須酵素、グルコサミン-6-リン酸N-アセチルトランスフェラーゼ(GNA)をコードする遺伝子GNA1
のミスセンス変異であることを突き止めた。酵素活性測定の結果、lig 変異によるアミノ酸置換をもつ変異型GNA1(GNA1G68S)は、正常なGNA1に比べて熱安定性が低いことがわかった。制限温度に曝露したlig
変異体でUDP-GlcNAcの内生量が低かったこと、lig にUDP-GlcNAcやGlcNAcを与えると表現型が回復したことから、UDP-GlcNAc欠乏が成長不全やリグニンの異常蓄積をもたらすと考えられた。一般にUDP-GlcNAcはN-結合多糖合成において最初の糖供与体となること、N-結合多糖合成の欠損が小胞体ストレス応答の引き金となり得ることが知られている。これを踏まえ、N-結合多糖合成および小胞体ストレス応答とlig
の表原型との関連を調べたところ、lig 変異体ではUDP-GlcNAc の欠乏がN-結合多糖の合成を低下させ、小胞体ストレス応答を介してリグニン蓄積や成長不全を引き起こしていることが示唆された。
図1.lig 変異体の温度依存的な成長不全とリグニンの異常蓄積
(A)野生型(Ler)とlig の芽生えをいろいろな温度で7日間育てた。スケールバーは10 mm。lig
の成長は高温条件下で著しく阻害されている。 (B)18°Cまたは28°Cで5日間育てた芽生えのシュート頂部と根端部をフロログルシノール-塩酸で染色し観察した。スケールバーは100
μm。28°Cで育てたlig 変異体の組織は、リグニンの異常な蓄積により、赤く染まって見える。
図2.組換えGNA1タンパク質の酵素活性
(A)野生型の組換えGNA1タンパク質とlig 変異によるアミノ酸置換をもつ変異型組換えタンパク質GNA1G68Sについて、酵素反応で生じるCoAを測定した。
(B)18°Cまたは28°CでインキュベートしたときのGNA1およびGNA1G68Sの酵素活性の時間変化。GNA1G68Sの安定性が野生型GNA1に比べて低く、とくに28°Cで急速に活性を失うことを示している。
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