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  • 論文紹介【第9回論文紹介】
  • シロイヌナズナの葉の形成に必要な AS2 タンパク質はタバコ培養細胞 BY-2 の分裂期にスペックルを形成し、そのために必要な特徴的な配列を保持している

論文紹介

研究代表者

町田 泰則

所 属 名古屋大学大学院理学研究科
著 者

Luo Lilan, Sayuri Ando, Michiko Sasabe, Chiyoko Machida, Daisuke Kurihara, Tetsuya Higashiyama,Yasunori Machida
(羅 麗蘭、安藤沙由理、笹部美知子、町田千代子、栗原大輔、東山哲也、町田泰則)

論文題目

Arabidopsis ASYMMETRIC LEAVES2 protein required for leaf morphogenesis consistently forms speckles during mitosis of tobacco BY-2 cells via signals in its specific sequences.
(シロイヌナズナの葉の形成に必要な AS2 タンパク質はタバコ培養細胞 BY-2 の分裂期にスペックルを形成し、そのために必要な特徴的な配列を保持している)

発表誌

Journal of Plant Research in press (2012)

要 旨

 シロイヌナズナの ASYMMETRIC LEAVES2 (AS2) は、AS1 とともに、葉の左右相称性や表・裏の構造が正常に形成されるために必要な核タンパク質である。このタンパク質は、少なくとも双子葉植物に特有であり、菌類や後生動物には見られない。AS2 は、葉の形成に関わること、葉の形成に関わる複数の遺伝子の転写レベルを抑制していること、AS2 ドメインと名付けられた新奇なドメイン構造を持っていること、核小体周辺領域にスペックル状に存在していることなどがわかっているが、その生化学的な機能は不明である。今回は、機能の一端を知るために、YFP (イエロー蛍光タンパク質)を融合した AS2-YFP タンパク質をタバコ培養細胞 BY-2 で発現させて、YFP 蛍光を指標として、細胞分裂の過程での AS2 スペックル(AS2 小体と命名した)の動態を検討した。図 1 に示すように、(1) 間期の細胞では、数% の細胞が AS2 小体を形成すること、(2) 分裂期に入ると、細胞により数は異なるが、100% の細胞が小体を形成すること、(3) 後期以降に、それぞれのAS2 小体は倍加して、それぞれが分裂期の進行にともなって娘細胞に分配されていくことがわかった。この観察から、小体について2つの役割が考察された。(1) 同数の AS2 小体が分配されることから、AS2 タンパク質を娘細胞に正確に配分する仕組みが存在し、AS2 小体はそのための役割を担っていると考えられる。(2) AS2 小体の生成から消失の過程で、遺伝子転写の抑制に関わる反応が起こっている可能性が考えられる。さらに、AS2 小体形成には AS2 ドメインが必要であることがわかった。今後は、細胞分裂期を通しての AS2 小体の分配の仕組みと遺伝子発現抑制に及ぼす影響について研究していきたい。

図1.タバコ培養細胞 BY-2 の細胞周期における AS2 小体の存在様式
誘導的に AS2-YFP を発現できる遺伝子を導入した形質転換 BY-2 細胞を作成した。対数増殖期の細胞で AS2-YFP を発現させ、Interphase (間期:上から2段目)と mitosis (分裂期:3 から 6 段目)の細胞における AS2-YFP の蛍光を蛍光顕微鏡で観察した。細胞の染色体 DNA を DAPI で染色して青色で示す。分裂期前期(3 段目);中期(4 段目);後期(5 段目);終期(6 段目)の細胞を示す。後期以降に対をなして娘細胞に分配されていく AS2 小体を矢尻で示す。
研究室HP http://www.bio.nagoya-u.ac.jp/~yas/dmcb/dmcb.html