著 者 |
Takumi Higaki, Natsumaro Kutsuna, Yoichiroh Hosokawa, Kae Akita, Kazuo Ebine, Takashi Ueda, Noriaki Kondo, Seiichiro Hasezawa
(桧垣匠、朽名夏麿、細川陽一郎、秋田佳恵、海老根一生、上田貴志、近藤矩朗、馳澤盛一郎) |
要 旨 |
気孔開閉に伴う各種細胞内構造の動態を網羅的に調べるために,植物の代表的な細胞内構造18 種をそれぞれ蛍光タンパク質で標識した形質転換シロイヌナズナを使い,日周期に伴う気孔開閉過程における孔辺細胞の高解像度三次元顕微鏡画像を多数取得した.得られた2 万8 千枚以上の顕微鏡画像は画像データベースLive Image of Plant Stomata(LIPS)としてウェブ上で公開している(http://hasezawa.ib.k.u-tokyo.ac.jp/lips/).さらに,LIPS データベース上の画像を用いて,孔辺細胞における各種細胞内構造の平均的な分布(確率分布)を可視化する画像解析法を独自に開発し,分布の類似度を定量評価した.その結果、アクチン繊維と小胞体が、主に孔辺細胞の背面側と連結部位に局在することが明らかになった.また,気孔の開閉状態間の差分画像から,気孔が開くときに小胞体が孔辺細胞腹側から背側に移動するなどの新知見が得られた.この小胞体の移動は多数の顕微鏡画像による統計的な解析結果だけでなく,葉組織に対する白色光照射や,表皮細胞に対するレーザーアブレーションによる気孔開口過程の経時観察によっても確認された.これらの結果から,気孔開口時には細胞膜成分が急激に必要となる孔辺細胞背側付近に小胞体が集積して膜成分の供給を助けている可能性が示唆された.
図1.自己組織化マップによる各種細胞内構造の確率分布マップの類似性評価.近い箇所に位置した細胞内構造は類似した局在を示す.
図2.気孔開閉時における確率分布マップの差分画像.赤色が気孔閉鎖時に,緑色が気孔開口時に顕著な局在を示す. |