論文紹介

研究代表者

馳澤 盛一郎

所 属 東京大学新領域創成科学研究科
著 者

Takumi Higaki, Shogo Higaki, Masao Hirota, Kae Akita, Seiichiro Hasezawa
(桧垣匠、桧垣正吾、廣田昌大、秋田佳恵、馳澤盛一郎)

論文題目

Radionuclide analysis on bamboos following the Fukushima nuclear accident.
(福島第一原子力発電所事故に伴うタケ・ササ植物の放射性核種分析)

発表誌

PLoS ONE 7: e34766 (2012)

要 旨

 昨年3月の福島第一原子力発電所事故を受けて,タケ・ササ植物における放射性セシウムの汚染状況を調査した.福島県南相馬市のハチク,福島県福島市のアズマネザサ,福島県会津若松市のホテイチク,千葉県柏市と愛知県豊橋市のメダケ,大分県別府市のメンヤダケを採集し,ゲルマニウム半導体検出器による放射能濃度測定を実施した(図1).事故当時には既に展開していた成熟葉の134Cs,137Cs放射能濃度を測定したところ,福島市の試料が最も濃度が高く,それぞれおよそ71 kBq/kg,79 kBq/kg(以下すべて乾燥重量当たり)であった.南相馬市も同程度に高く,それぞれおよそ64 kBq/kg,75 kBq/kgであった.会津若松市はそれよりも一桁低く4.7 kBq/kg,5.6 kBq/kg,柏市は3.4 kBq/kg,4.3 kBq/kgであり,豊橋市と別府市の試料はいずれも検出限界(4.5 Bq/kg)以下だった.また,いずれの試料においても事故後に展開した新葉は成熟葉よりも低い放射能濃度を示した.これらの放射能濃度と空間線量率の関係を調べたところ,両者には強い相関関係があることが分かった(図2).福島市の笹の葉を粉末茶として毎日6杯(1.2 g)経口摂取した場合,134Csと137Csの合算で,年間被ばく線量は1 mSvを超える計算となる.

図1.タケ・ササ植物の採集場所.括弧内に福島第一原子力発電所からの直線距離を示す.
図2.タケ・ササ植物の葉における137Cs放射能濃度と地上1m空間線量との関係.
研究室HP http://hasezawa.ib.k.u-tokyo.ac.jp/zp/hlab