論文紹介

研究代表者

矢崎 一史

所 属 京都大学 生存圏研究所
著 者 Kojiro Takanashi, Akifumi Sugiyama, Kazufumi Yazaki
(高梨功次郎、杉山暁史、矢崎一史)
論文題目 Involvement of auxin distribution in root nodule development of Lotus japonicus
(ミヤコグサの根粒発生におけるオーキシンの関与)
発表誌

Planta 234: 73-81 (2011)

要 旨    マメ科植物は根粒菌と共生関係を結ぶことで新しい器官である「根粒」を形成する。根粒は共生窒素固定器官として重要な役割を果たしているが、この研究では、ミヤコグサを材料にして根粒形成にオーキシンが組織内でどのように関与しているかを、レポータ遺伝子(GUS)と様々なオーキシン阻害剤を用いて調べた。オーキシンレポータであるGH3-GUSを用いた解析によると、根粒発生前のオーキシン濃度は根の中心柱の中で高いが、根粒形成が始まると、分裂を始めた皮層細胞でみられるようになり、根粒が成熟するとシグナルは根粒維管束のみになった。これは、ミヤコグサやダイズのような有限型根粒においては、エンドウやシロツメクサのような無限型根粒とは異なったオーキシンの使い方をしていることを示唆している。
さらに、様々な機構のオーキシン輸送阻害剤(NPA, TIBA)、およびオーキシン拮抗剤(PEO-IAA)を用いた実験において、いずれの場合でも根粒表面に伸長する皮目の発生が強く抑制されることが見出された。またその原因となっているのは、これらオーキシン阻害によって皮目の下に発達するはずの根粒維管束が形成されなくなることであることが明らかとなった。 皮目は根粒におけるガス交換において重要な役割を果たしている。今回、オーキシンが皮層の分裂や根粒維管束の維持など、様々な面で有限型根粒の形成過程で働いていることを明らかにした。
研究室HP

http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/W/LPGE/