論文紹介

研究代表者

藤田 知道
長谷部 光泰、日渡 祐二

所 属 北海道大学大学院理学研究院
基礎生物学研究所生物進化研究部門
著 者 Banks, J.A., Nishiyama, T., Mitsuyasu Hasebe, M., Bowman, J.L., Gribskov, M., dePamphilis, C., … Tomomichi Fujita, … Yuji Hiwatashi, … (103 authors)
(長谷部光泰、藤田知道、日渡祐二 他)
論文題目 The Selaginella Genome Identifies Genetic Changes Associated with the Evolution of Vascular Plants
(イヌカタヒバゲノムから明らかになった、維管束植物進化に関係した遺伝子の変化)
発表誌

Science2011年5月20日号掲載 332巻、960-963ページ

要 旨    陸上植物の中で被子植物とコケ植物のゲノムは解読されていました。しかし、両グループの中間に位置するシダ植物はゲノムの大きさが大きく、ゲノム解読が難しかったことから、どのような遺伝子のどのような進化によって陸上植物が進化してきたのかは謎でした。また陸上植物全体に共通な遺伝子、陸上植物それぞれのグループに特徴的な遺伝子が何なのかは分かりませんでした。
 そこで私たちは、ゲノムサイズが小さい(1億600万塩基対)シダ植物、イヌカタヒバに着目し、10カ国による共同研究の成果としてその全ゲノム解読に成功しました。この結果、イヌカタヒバから約22,000の遺伝子(シロイヌナズナ約26,000遺伝子、ヒメツリガネゴケ約28,000遺伝子)を見出し、陸上植物に共通する遺伝子を多く見出しました。
 この一方で、陸上植物の各グループが、独自に遺伝子数を増減させて多様性を生み出していることもわかりました。これらの遺伝子の中には、植物の発生や成長に重要な植物ホルモンの合成系や情報伝達遺伝子(AUX/IAA, GID1, CTR1, BRI1, ACS, ACO)、分裂組織の形成・維持に必要な鍵遺伝子(CLV1, 2, VND, AS2,TFL1, UFO, HUA1, EMF1など)がありました。また二次代謝産物の生産に関わる遺伝子も各植物グループで独自に増減し、それぞれの環境に適応していることが分かりました。
図.材料となったイヌカタヒバSelaginella moellendorffii の小葉。
被子植物の大葉と異なり、葉脈を1本だけしか形成せず、葉脈と茎の維管束が合流するときに葉隙を形成しない。
研究室HP

http://www.sci.hokudai.ac.jp/~tfujita/Fujita/welcome.html

http://www.nibb.ac.jp/evodevo/