論文紹介

研究代表者

福田 裕穂

所 属 東京大学大学院理学系研究科
著 者 Kondo Y, Hirakawa Y, Kieber JJ, Fukuda H.
(近藤侑貴 平川有宇樹 Joseph J Kieber 福田裕穂)
論文題目 CLE peptides can negatively regulate protoxylem vessel formation via cytokinin signaling.
(CLEペプチドは、サイトカイニンシグナルを介して原生木部道管形成を負に制御する。)
発表誌

Plant Cell Physiol., 52: 37-48, 2011.

要 旨    植物の形づくりは様々なホルモンによって厳密に規定されています。実際に、多くの植物ホルモンは形づくりの様々な局面を支配しています。一方で、近年注目を集める低分子ペプチドに関しても、植物の発生や成長における重要性が明らかになりつつあり、中でもCLEペプチド群は、頂端分裂組織の維持や維管束細胞の分化の制御など、多岐にわたる発生イベントを制御することが知られています。しかしながら、CLEペプチドがどういった下流シグナルを辿って植物の形を変化させるのか、その仕組みはほとんど分かっていません。 今回、私たちは26種のCLEペプチドを合成し、シロイヌナズナの成長に与える影響を網羅的に解析しました。その結果、あるCLEペプチド群が根の原生木部道管の形成を阻害することを見出しました。そこでマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析をおこない、CLE9/10ペプチドがサイトカイニンのシグナル伝達の抑制に関わるレスポンスレギュレーターの発現を減少させることを明らかにしました。更に遺伝学的アプローチからも、CLE9/10ペプチドがサイトカイニンシグナルを促進していることを明らかにしました。これらの事実から、CLE9/10ペプチドはサイトカイニンシグナルを促進することで木部分化を負に制御するという、両シグナルのクロストークが明らかになりました。
図1.CLE受容体clv2 の根の維管束構造
共焦点顕微鏡で得られた画像イメージから根の維管束構造を三次元再構築した。赤は原生木部道管を示しており、CLEペプチドを受容できないこの変異体では異所的な原生木部道管が観察された(手前の赤)。
図2.CLEペプチドとサイトカイニンシグナルとのクロストーク
遺伝子発現解析及び遺伝学的解析からCLEペプチドがサイトカイニンシグナルの負の制御因子であるtype-A ARRsの発現を抑えることで、サイトカイニンシグナルを強めていることが明らかとなった。
研究室HP http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/seigyo/lab.html