論文紹介

研究代表者

町田 泰則

所 属 名古屋大学大学院理学研究科
著 者 Shoko Kojima, Mayumi Iwasaki, Hiro Takahashi, Tomoya Imai, Yoko Matsumura, Delphine Fleury, Mieke Van Lijsebettens, Yasunori Machida, and Chiyoko Machida
(小島晶子、岩崎まゆみ、高橋広夫、今井智哉、松村葉子、Delphine Fleury、Mieke Van Lijsebettens、町田泰則、町田千代子)
論文題目 ASYMMETRIC LEAVES2 and Elongator, a histone acetyltransferase complex, mediate the establishment of polarity in leaves of Arabidopsis thaliana
(ASYMMETRIC LEAVES2とヒストンアセチル化酵素複合体のElongatorはシロイヌナズナの葉の極性確立を仲介する)
発表誌

Plant Cell Physiology 52: 1259-1273 (2011)

要 旨   シロイヌナズナのASYMMETRIC LEAVES2 は、葉の形態に多面的な影響を与え、葉の向背軸性(表裏)の確立にも関与するが、その分子機能は未解明である。as2-1 変異が起こると、葉の向軸側的性質が若干低下する。この低下を一層亢進する変異体として、我々はenhancer-of-asymmetric leaves-two1 (east1 ) を分離し、変異がELONGATOR3 (ELO3 ) 遺伝子の中にあることを報告した。as2-1 elo3 二重変異体では、背軸側化した棒状やラッパ状の葉が生じる(図1A-D)。つまり、葉の向軸側化が不全になっていると推察される。ELO3 は、酵母やヒトのElp3 と相同な遺伝子である。Elongator複合体はELO3/Elp3を含み、ヒストンアセチル化を介して転写を促進することが報告されている。我々の発現解析の結果、as2-1 elo3 二重変異体では茎頂メリステム特異的な class1 KNOX ホメオボックス遺伝子群と葉の背軸側化に関わる遺伝子群のmRNA蓄積量が顕著に上昇していた(図1E)。さらに遺伝解析により、ELO3 以外のElongator複合体の因子も葉の向背軸分化に関わることがわかった。したがって、ヒストンのアセチル化が、AS2の何らかの機能と共に葉の背軸側化に関わっていると考えられる。遺伝解析の結果、このELO3 を介した経路は、AS2を介した経路や既知の向軸側化を制御している経路とは異なることもわかった。従って葉の表裏の分化には複数の経路が存在し、その調節においてAS2 が重要な役割を果たしていると考えられる(図2)。
図1.(A-D) 野生型および各変異体の形態。(A) as2-1、 (Ba) as2-1 elo3、 (Bb) as2-1 elo3 の中心部の拡大図、(C) Col-0(野生型)、(D) elo3。矢尻は棒状の葉、矢印はラッパ状の葉を示す。(E) as2-1、 elo3、as2-1 elo3 変異体におけるclass1 KNOX および葉の表裏分化に関わる遺伝子群のmRNA 蓄積量をCol-0に対する相対量として縦軸に示した。RNAは、は種後14日目の地上部から抽出した。
図2.AS2とELO3の作用機構のモデル図
研究室HP http://www.bio.nagoya-u.ac.jp:8001/~yas/b2.html