論文紹介

研究代表者

上田 貴志

所 属 東京大学大学院理学系研究科
著 者 Kazuo Ebine, Naoto Miyakawa, Masaru Fujimoto, Tomohiro Uemura, Akihiko Nakano, and Takashi Ueda
(海老根一生、宮川直人、藤本優、植村知博、中野明彦、上田貴志)
論文題目 Endosomal trafficking pathway regulated by ARA6, a RAB5 GTPase unique to plants.
(植物に特異的なRAB GTPase, ARA6が制御するエンドソーム輸送経路の研究)
発表誌

Small GTPases, in press.

要 旨   真核生物の細胞には多数の細胞小器官が存在し、それらの間は膜に囲まれた小胞や小管を介した輸送システムにより結ばれています。この仕組みは、道路や乗り物を介した輸送システムになぞらえ、膜交通と呼ばれています。我々は、この膜交通の経路が植物でどのように多様化しているのかに注目し、研究を行っています。ARA6は、陸上植物が進化の過程で独自に獲得した膜交通制御因子です。このARA6の機能を詳しく調べた結果、我々はARA6がこれまで植物では知られていなかったエンドソームから細胞膜への輸送を制御していること、この輸送経路が塩ストレス耐性に重要であることを突き止めました(Ebine et al., 2011,第7回の論文紹介参照)。今回我々は,このARA6の機能を増強したシロイヌナズナが、浸透圧ストレスにも強くなることを見いだしました。シロイヌナズナ以外の植物においても、ARA6ホモログが塩ストレス応答に関与する可能性が示されていることから、ARA6が制御する膜交通経路と環境ストレスの関係は、陸上植物に広く保存されているものと考えられます。
図1.ARA6を獲得することにより、陸上植物は新しい膜交通経路を獲得した。一連の研究により、この膜交通経路が、塩や浸透圧ストレスに対する応答に深く関わっていることが明らかとなった。
研究室HP http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/faculty/tchr_list/uedatakeshi.shtml