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- 論文紹介【第8回論文紹介】
- 26SプロテアソームのサブユニットをコードするシロイヌナズナのRPT2a遺伝子は根端分裂組織の維持におけるさまざま局面に必要であり、
相同遺伝子であるRPT2b遺伝子と冗長的に配偶体形成を制御する。
論文紹介
研究代表者 |
岡田 清孝
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所 属 |
基礎生物学研究所 |
著 者 |
Minako Ueda, Keisuke Matsui, Sumie Ishiguro,
Tomohiko Kato, Satoshi Tabata, Masatomo Kobayashi, Motoaki Seki,
Kazuo Shinozaki, Kiyotaka Okada
(植田美那子、松井啓祐、石黒澄衞、加藤友彦、田畑哲之、小林正智、関原明、篠崎一雄、岡田清孝) |
論文題目 |
Arabidopsis RPT2a Encoding the 26S Proteasome
Subunit is Required for Various Aspects of Root Meristem Maintenance,
and Regulates Gametogenesis Redundantly with its Homolog, RPT2b.
(26SプロテアソームのサブユニットをコードするシロイヌナズナのRPT2a遺伝子は根端分裂組織の維持におけるさまざま局面に必要であり、相同遺伝子であるRPT2b遺伝子と冗長的に配偶体形成を制御する。) |
発表誌 |
Plant and Cell Physiology, 52, 1628-40, 2011.
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要 旨 |
プロテアソームとは、特異的な標的タンパク質を分解する巨大な複合体であり、メリステム維持などの様々な局面で働くことが知られている。シロイヌナズナにおいて、プロテアソームのサブユニットの多くが2つの相同遺伝子(RPT2aと2b、RPT5aと5bなど)によってコードされる。本研究の結果、RPT2aとRPT5aの変異体のメリステムでは無秩序に細胞分裂面が形成されて組織構造が崩壊するのに対し、rpt2bやrpt5b変異体では何ら形態異常が見られないことから、これら相同遺伝子がメリステム機能に果たす役割には違いがあることが明らかとなった。一方、2つの相同遺伝子セットを同時に欠損させると雌性・雄性配偶体がともに致死になることから、配偶体形成時にはRPT2aやRPT5aはともにそれぞれの相同遺伝子と冗長的に働くことが判明した。メリステムにおけるRPT2aとRPT2bの発現パターンとタンパク質機能は同等であったが、発現レベルが異なることから、これらの役割の差異は、発現量の違いによると考えられる。
さらに、rpt2a変異体のメリステムでは無秩序な細胞分裂面の形成以外にも、細胞死や細胞機能の低下が観察されるが、メリステム内の各組織で特異的にRPT2aを発現させると、これらの異常は個別に解消されたことから、RPT2aは様々な経路で働き、包括的にメリステム維持を果たすことも示された。
図1.プロテアソームの模式図
プロテアソームは特異的なタンパク質分解を担い、そのサブユニットの多くは2コピーの遺伝子によってコードされる。
図2. RPT遺伝子セットの役割の差異
RPT2a、RPT2b、RPT5a、RPT5bのそれぞれが欠損した場合の表現型を模式的にまとめた。メリステム機能に必要あるいは不要な遺伝子をそれぞれ赤色と緑色で示す。
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研究室HP |
http://www.nibb.ac.jp/sections/developmental_biology/okada-k/ |
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