論文紹介

研究代表者

出村 拓

所 属

奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科
理化学研究所バイオマス工学プログラム

著 者

Masatoshi Yamaguchi, Nobutaka Mitsuda, Misato Ohtani, Masaru Ohme-Takagi, Ko Kato, Taku Demura
(山口雅利、光田展隆、大谷美沙都、高木優、加藤晃、出村拓)

論文題目

VASCULAR-RELATED NAC-DOMAIN 7 directly regulates expression of a broad range of genes for xylem vessel formation.
(VASCULAR-RELATED NAC-DOMAIN 7は道管形成過程において多様な遺伝子の発現を直接制御する)

発表誌

Plant Journal, vol. 66; 579-590. (2011)

要 旨  私たちはこれまでに、道管要素分化をマスター因子としてNACドメイン転写因子をコードするVND7を同定した(Kubo et al. 2005, Genes Dev)。また、VND7をグルココルチコイドレセプタードメインと融合させることで、デキサメタゾン(DEX)依存的に道管分化を効率的に誘導可能なシステムを構築した(Yamaguchi et al. 2010, Plant Phyisol)。この誘導システムを用いて、DEXと同時にタンパク質阻害剤であるシクロヘキシミドを処理することで、VND7により直接発現が制御される遺伝子の探索を行った。その結果、35SプロモーターによるVND7過剰発現体において発現が上昇する300の遺伝子のうち、63の遺伝子がVND7により直接制御されることが明らかとなった。それらの中には、転写因子の他、二次細胞壁形成やプログラム細胞死など道管要素分化に関わる遺伝子が含まれていた(図1)。プログラム細胞死に関与するXCP1について詳細な解析を行ったところ、プロモーターの約140 bpの領域がVND7による発現制御に重要であること、さらにその領域中には少なくとも2カ所 VND7が結合することが明らかとなった。これらの結果より、VND7は道管要素の分化過程において下流の転写因子を介した発現制御だけでなく、多くの遺伝子について直接発現を制御していることが明らかとなった。
図1 VND7の道管要素分か過程における転写制御。灰色で囲まれた遺伝子は転写因子を、赤矢印は直接遺伝子発現を制御していることを示す。

研究室HP http://labs.psc.riken.jp/mrt/index.html