論文紹介

研究代表者

島本 功

所 属

奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科

著 者

Ken-ichiro Taoka*, Izuru Ohki*, Hiroyuki Tsuji*, Kyoko Furuita, Kokoro Hayashi, Tomoko Yanase, Midori Yamaguchi, Chika Nakashima, Yekti Asih Purwestri, Shojiro Tamaki, Yuka Ogaki, Chihiro Shimada, Atsushi Nakagawa, Chojiro Kojima and Ko Shimamoto
(田岡 健一郎*、大木 出*、辻 寛之*、古板 恭子、林 こころ、柳瀬 朋子、山口 緑、中島 千佳、Yekti Asih Purwestri、玉置 祥二郎、大垣 友香、島田 千尋、中川 敦史、児嶋 長次郎、島本 功)

論文題目

14-3-3 proteins act as intracellular receptors for rice Hd3a florigen
(14-3-3タンパク質はフロリゲンHd3aの細胞内受容体である)

発表誌

Nature in press (2011) 

要 旨  フロリゲン(花成ホルモン)は植物の花芽形成を開始させる決定的な分子である。本論文では14-3-3タンパク質がフロリゲンの受容体として機能することを示した。

 1937年にロシアの植物学者チャイラヒアンは、花が咲く季節になると葉で作られ、茎の先端まで移動して花芽形成を開始させる物質フロリゲンの存在を提唱した。提唱以来、フロリゲンの正体は長く謎のままであったが、2007年にその正体がHd3a/FTと呼ばれるタンパク質であることが明らかとなった。Hd3aタンパク質は、イネの花成誘導条件である短日条件下に葉で合成され、その後茎頂メリステムへ長距離移動して花芽形成を開始させる。
私たちはHd3aが花を咲かせるメカニズムを明らかにする目的で研究を行った。その結果、Hd3aは茎頂メリステムの細胞に到達した後、まず細胞質で14-3-3タンパク質と相互作用したのち、Hd3a-14-3-3複合体の形で核内へ移動することが分かった。Hd3a-14-3-3複合体は核内でbZIP型転写因子OsFD1と転写複合体を形成し、花芽形成遺伝子群の発現を開始させることを示した(図)。これらの結果から、14-3-3タンパク質はフロリゲンHd3aの細胞内受容体であると考えることができ、Hd3a-14-3-3-OsFD1からなるタンパク質複合体(Florigen Activation Complex, FAC)が花成を促進すると考えられる。
図 (A) フロリゲンの受容と機能のメカニズム。 (B) Florigen Activation Complexの結晶構造を明らかにした。DNAとの結合はモデリングにより構築した。

研究室HP http://bsw3.naist.jp/simamoto/simamoto.html