論文紹介

研究代表者

関 原明

所 属

植物科学研究センター
植物ゲノム発現研究チーム

著 者

Taiko K. To, Kentaro Nakaminami, Jong-Myong Kim, Taeko Morosawa, Junko Ishida, Maho Tanaka, Shigeyuki Yokoyama, Kazuo Shinozaki, Motoaki Seki.
(藤 泰子、中南健太郎、金 鍾明、諸澤妙子、石田順子、田中真帆、横山茂之、篠崎一雄、関 原明)

論文題目

Arabidopsis HDA6 is required for freezing tolerance.
(脱アセチル化酵素HDA6はシロイヌナズナの凍結耐性能の獲得に必須である)

発表誌

Biochem Biophys Res Commun 406(3)号、p414-419 (2011)

要 旨  急激な気温低下などの環境変動は植物体に大きなダメージを与える。これに対し、植物は温度低下に応答して様々な遺伝子の発現を制御し、低温ストレスに対応することが知られているが、クロマチン制御を介した耐凍性獲得のための遺伝子制御機構はそれほどよくわかっていない。
我々は、シロイヌナズナのヒストン脱アセチル化酵素HDA6の遺伝子変異株を用いて、低温処理条件下での表現型解析を行うとともに、長期低温条件下での遺伝子発現解析を行った。プレート培養したhda6遺伝子変異株は、4℃で3日間の低温馴化処理を行っても、十分な耐凍性を獲得することができず、生存率が著しく低下することがわかった。また、hda6遺伝子変異株を用いたトランスクリプトーム解析の結果、これまでに報告されている低温ストレス早期応答性の遺伝子群の発現パターンには変化は見られなかったが、長期低温処理により発現誘導される幾つかの遺伝子群の発現パターンに変化が見られた。以上の結果から、HDA6は低温馴化を介した植物の耐凍性獲得機構に関与することが明らかとなった。また、植物の低温応答機構は、転写制御などを始めとする初期応答反応とクロマチン変動を介した後期応答反応の2段階からなることが示唆された。
図1 プレート培養した野生型株およびhda6遺伝子変異株を用いて、耐凍性試を行ったところ、hda6遺伝子変異株は凍結感受性を示すことがわかった。また、低温馴化処理によって、野生型株は耐凍性を獲得する一方で、hda6変異株は生存率が著しく低下することがわかった。(野生型株;DR5, hda6遺伝子変異型株;axe1-5)

研究室HP http://labs.psc.riken.jp/pgnrt/