論文紹介

研究代表者

相田 光宏、田坂 昌生

所 属

奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科

著 者

Seiji Takeda, Keiko Hanano, Ayano Kariya, Satoko Shimizu, Li Zhao, Minami Matsui, Masao Tasaka and Mitsuhiro Aida
(武田征士、花野恵子、苅谷綾乃、清水聡子、Li Zhao、松井 南、田坂昌生、相田光宏)

論文題目

CUP-SHAPED COTYLEDON1 transcription factor activates the expression of LSH4 and LSH3, two members of the ALOG gene family, in shoot organ boundary cells.
(転写因子CUP-SHAPED COTYLEDON1は、シュート器官の境界部細胞でALOG遺伝子ファミリーのLSH4とLSH3の発現を活性化する)

発表誌

The Plant Journal 66, 1066-1077 (2011)

要 旨  多細胞生物が器官を正しく形作るためには、器官と器官を分ける 「境界部」を確立する必要がある。植物では、茎頂にある分裂組織(シュート頂メリステム)から、葉や花などの器官が繰り返し作られ、各器官とメリステムを分ける境界部の細胞が作られる。陸上植物に保存されたNAC転写因子をコードするシロイヌナズナのCUP-SHAPED COTYLEDON1 (CUC1)とCUC2は、地上部器官の境界部の確立に中心的な役割を果たすことが知られているが、どのような遺伝子発現制御を介して境界部確立を担っているのかは不明であった。今回我々は、CUC1が葉や花などの器官境界部で、LSH4とLSH3という2つの遺伝子の発現を直接活性化していることを発見した。LSH4とLSH3は、共に陸上植物で保存されているALOG遺伝子ファミリー(Arabidopsis LSH1 and Oryza G1)に属する核局在タンパク質をコードしている。LSH4を過剰に発現させると、葉の成長抑制が見られ、花では余分なメリステムや花器官が形成された。これらの異常は、細胞の器官への分化が抑制され、メリステム様の状態が維持されたことが原因であると推測された。
以上の結果から、CUC1はLSH4とLSH3の転写を介して、境界部の細胞の分化を抑制しており、この抑制が境界部の確立機構のひとつであることが示された。
図1  (A1〜A3) LSH4 genomic fragment:GFPの心臓型胚期での発現・局在パ ターン。緑の蛍光がLSH4の発現細胞と核局在性を示してい る。3枚の連続切片で、LSH4は子葉境界部で発現しているが (A1, A3)、中心のメリステム付近では発現していない(A3)。(B) LSH4過剰発現体の花。ひとつの花から、もうひとつの花が形成され (矢尻)、がく片と花弁のキメラのような器官が作られている(矢印)。

研究室HP http://bsgcoe.naist.jp/en/special.html
http://bsw3.aist-nara.ac.jp/keihatsu/dynamics/index.html