論文紹介

研究代表者

中島 敬二

所 属

奈良先端科学技術大学院大学

著 者

Shunsuke Miyashima, Satoshi Koi, Takashi Hashimoto, and Keiji Nakajima
(宮島俊介、厚井聡、橋本隆、中島敬二 )

論文題目

Non-cell-autonomous microRNA165 acts in a dose-dependent manner to regulate multiple differentiation status in the Arabidopsis root
(細胞非自律的マイクロRNA165は、シロイヌナズナの根において複数の細胞分化状態を量依存的に調節する)

発表誌

Development 2011 138:2303-2313

要 旨  植物の根を輪切りにしてみると、いろいろな形や大きさの細胞が整然と並んでいるのが見えます。これらの細胞はそれぞれ異なる役割をもっていて,正しく配置されることで初めて根の機能を発揮させることができます(図の上段).細い根の中に、どうして様々な細胞を精密に配置することが出来るのか、これは植物を研究する上でとても興味深い問題です。植物の細胞分化は、周囲の細胞とのコミュニケーションを通じて決まりますが,そのメカニズムの多くは未解明です。
この論文では,「内皮」と呼ばれる細胞層で作られた小さなRNA分子が根の中に広がり,その勾配が組織の配置を決めていることを明らかにしました。このRNAはマイクロRNA165 (miR165)と呼ばれ,植物の細胞分化に重要なPHBと呼ばれる転写因子のメッセンジャーRNAを特異的に分解します。miR165が内皮から広がることで,PHBの発現は,根の中心で濃く、内皮の近傍では薄い逆向きの勾配を作ります。PHBの量が,根の様々な細胞の分化を決めることが分かっていますので,結果的にmiR165の勾配が根の細胞配置を決めることになります。動物ではモルフォジェンと呼ばれるシグナル物質が、濃度の違いでいろいろな細胞を作り分けることが知られています。今回の成果は、植物でマイクロRNAがモルフォジェンと良く似た仕事をしていた、というところに面白さがあります。
研究室HP http://bsw3.naist.jp/hashimoto/hashimoto.html