論文紹介

研究代表者

塚谷 裕一

所 属

東京大学大学院理学系研究科

著 者

Gorou Horiguchi, Hokuto Nakayama, Naoko Ishikawa, Minoru Kubo, Taku Demura, Hiroo Fukuda, Hirokazu Tsukaya
(堀口吾朗、中山北斗、石川直子、久保 稔、出村 拓、福田裕穂、塚谷裕一)

論文題目

ANGUSTIFOLIA3 plays roles in adaxial/abaxial patterning and growth in leaf morphogenesis
(ANGUSITFOLIA3は葉の形態形成において背腹性と成長を制御する役割を果たす)

発表誌

Plant and Cell Physiology 52, 112-124, 2011

要 旨   植物の葉が平らな形に発達するには、まず、葉の表側と裏側が確立され、それによって葉の細胞増殖が活発になることが重要だと考えられています。シロイヌナズナのangustifolia3 (an3)変異株では、細胞増殖が不活発になり、葉の形が野生型に比べ細く変化します。野生型とan3の葉の発生過程を詳しく調べたところ、いずれの場合も葉原基の形は、形成初期には細く、その後成長するに従って丸く変化していきました。それに応じて、細胞分裂面も葉原基の縦軸と直交する方向(つまり縦方向に細胞が増える)が優先的だったものが、やがて縦軸と平行(横方向に細胞が増える)になる頻度を増していきました。しかし、an3ではこのような分裂面の変化が起こる途中で細胞増殖が非常に不活発になるため、葉が丸く変化しきれていないのだということがわかりました。一方、細胞増殖の低下は一般に、葉の表裏の制御とも密接に関わっています。そこで、an3変異株をas2変異株と掛け合わせた二重変異株を解析しました。as2は葉の表側の性質が弱まった突然変異株で、別の突然変異と組み合わせると裏側のみの性質を持った棒状の葉を作る例が、数多く報告されています。調べてみると、an3 as2二重変異株では部分的に裏側化したトランペット型の葉が形成されました。これらの結果から、AN3遺伝子は葉の細胞増殖と表裏の制御の両方に関与する、葉の形態形成上たいへん重要な遺伝子であることが明らかになりました。
図1 an3は細い葉を作る表現型を示す。an3 as2二重変異株ではトランペット型の葉が形成される。
研究室HP http://www.nibb.ac.jp/%7Ebioenv2/indexj.html
http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/bionev2/top_j.html