論文紹介

研究代表者 澤 進一郎 所 属 熊本大学大学院自然科学研究科及び東京大学大学院理学系研究科
著 者 Atsuko Kinoshita, Shigeyuki Betsuyaku, Yuriko Osakabe, Shinji Mizuno, Shingo Nagawa, Yvonne Stahl, Rüdiger Simon, Kazuko Yamaguchi-Shinozaki, Hiroo Fukuda, Shinichiro Sawa
(木下温子、別役重之、刑部祐里子、水野真二、名川信吾、Yvonne Stahl、 Rüdiger Simon、篠崎和子、福田裕穂、澤進一郎)
論文題目

RPK2 is an essential receptor-like kinase that transmits the CLV3 signal in Arabidopsis
(RPK2はシロイヌナズナにおいてCLV3の情報を伝達する重要な受容体様キナーゼである)

発表誌 Development, 137, 3911-3920, 2010
要 旨   高等植物の胚発生では一部の器官のみが形成され、多くの器官は胚発生後に茎頂分裂組織から生み出される。近年の解析により、この茎頂分裂組織を適切に維持するためには、低分子ペプチドリガンドであるCLV3が、転写因子WUSの遺伝子発現を抑制する、細胞非自立的なシグナル伝達系が重要であることが明らかになってきた。これまでに、CLV1、およびCLV2-SOL2/CRNという2つの独立な複合体がCLV3の受容体として機能することが報告されているが、CLV3の下流で機能する因子は未だわずかしか単離されていない。
 本研究ではCLV3の下流で機能する新規因子の単離を目的として、CLV3の合成ペプチドに耐性を示す突然変異体の探索を行った。野生型にCLV3ペプチドを投与すると、茎頂分裂組織が欠失し植物体は生育を停止するのに対し、rpk2変異体では茎頂分裂組織は維持され花茎の伸長が観察された。また、rpk2変異体は茎頂分裂組織の肥大化や花器官数の増大など、clv変異体に特徴的な表現型を示し、この表現型はclv1clv2変異体のいずれに対しても相加的であった。さらに、N. benthamianaにおける一過的発現系を用いた免疫沈降実験の結果、RPK2はCLV1、CLV2のいずれとも単独で結合性を持たないことが明らかになった。以上より、RPK2はCLV3の情報を伝達する第三の受容体であることが示唆された。
研究室HP http://www.sci.kumamoto-u.ac.jp/~sawa/index.html