論文紹介

研究代表者 松永 幸大 所 属 東京理科大学理工学部
著 者 Kurihara D, Matsunaga S, Omura T,Higashiyama T, Fukui K.
(栗原大輔、松永幸大、大村知広、東山哲也、福井希一)
論文題目 Identification and characterization of plant Haspin kinase as a histone H3 threonine kinase.
(植物ヒストンH3キナーゼ・ハスピンの同定と解析)
発表誌 BMC Plant Biol. 11: 73.(2011)
要 旨   ハスピンは酵母からヒトまで真核生物によく保存された体細胞分裂特異的リン酸化酵素である。今回、この酵素が植物にも存在し細胞分裂に寄与していることを報告した。シロイヌナズナで同定したハスピン(AtHaspin)はin vitroでヒストンH3のThr3とThr11の両方をリン酸化した。ライブセルイメージング解析の結果、ハスピンは染色体や細胞板に局在することがわかった。
 さらに蛍光イメージング解析の結果、ハスピンは植物体で、根のメリステム、葉のメリステム、花のメリステム、胚など細胞分裂が盛んな器官で発現していることがわかった。ドミナントネガティブ解析の結果、メリステムの領域減少や細胞壁の配向異常が見出された。このことは、AtHaspinが細胞分裂制御を通じて植物の発生分化メカニズムを制御していることを示唆している。
 今回の植物を使用した解析で、発生分化におけるハスピンの役割を初めて明らかにすることができた。
図1.タバコBY-2細胞を使用したライブセルイメージング
ハスピン(赤い蛍光)が紡錘体、染色体、細胞板などに局在することがわかる。微小管を緑色蛍光で示す。
図2.根の蛍光イメージング
ハスピンのプロモーターに緑色蛍光タンパク質を繋ぎ、局在解析した。静止中心(中央の蛍光が抜けている2個の細胞)以外のメリステム全域で発現していることがわかる。細胞壁を赤色で示す。
研究室HP http://www.rs.tus.ac.jp/sachi/