論文紹介

研究代表者 橋本 隆 所 属 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科
著 者 Masayoshi Nakamura, David Ehrhardt, and Takashi Hashimoto
(中村匡良、エアハルト・デービッド、橋本隆)
論文題目 Microtubule and katanin dependent dynamics of microtubule nucleation complexes in the Arabidopsis cortical array.
(アラビドプシス表層微小管アレーにおける微小管とカタニンに依存的な微小管重合核のダイナミックス)
発表誌 Nature Cell Biology 12: 1064-1070 (2010)
要 旨   植物細胞内で微小管ポリマーがその構成成分であるチューブリン・ユニットからいつ、どこで、どのように合成されるかは、微小管重合核により厳密に制御されている。この重合核が細胞のどの場所にいつ出現して、ポリマー合成可能な状態にどのようなメカニズムで活性化されるか、よくわかっていない。
  我々は、植物細胞の微小管重合核を緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識し、微小管ポリマーを赤色系蛍光タンパク質で標識した。生きた植物細胞で微小管とその重合核を同時に顕微鏡観察し、両者の位置関係、動きをムービーに撮って追跡観察した。この観察は通常の植物細胞と、微小管を切断するハサミタンパク質(カタニン)遺伝子が壊れている変異体植物細胞の2種類を使って行い、両細胞での観察結果を比較した。
  細胞内を高速で漂っている微小管重合核は細胞膜で一時的に動きがストップする。その場所に微小管が存在する場合には、微小管上に留まって、新たな娘微小管を枝分かれとして形成する。しかし、ハサミタンパク質の働きにより娘微小管が切り離されたり、微小管が本来持つ分解活性により娘微小管が消失したりの場合には、微小管重合核は親微小管上から離れるか、分解されるかした。この微小管形成モデルは、微小管上に留まった重合核が微小管重合能力を持つように活性化されることを示唆している。
図1
図1 微小管重合核の動きのライブ観察
微小管重合核(赤)と微小管(緑)をそれぞれ異なる蛍光タンパク質で標識した組換え植物体を作製し、両者の位置関係や動きを顕微鏡でライブ観察した。
図2
図2 微小管重合核からの新規微小管の誕生サイクル
重合核は活性化、不安定化などの状態変化を伴い、リサイクルされると考えられる。
研究室HP http://bsw3.naist.jp/hashimoto/hashimoto.html