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- 論文紹介【第5回論文紹介】
- シロイヌナズナの AS1 と AS2 遺伝子による葉の発生制御ネットワークの研究:
KNOX ホメオボックス遺伝子は5つの形態形成に関わっている
論文紹介
研究代表者 |
町田泰則 |
所 属 |
名古屋大学大学院理学研究科 |
著 者 |
Masaya Ikezaki, Mikiko Kojima, Hitoshi Sakakibara, Shoko Kojima, Yoshihisa Ueno, Chiyoko Machida, Yasunori Machida,
(池崎仁弥、小島美喜子、榊原均、小島晶子、上野良宜久、町田千代子、町田泰則) |
論文題目 |
Genetic networks regulated by ASYMMETRIC LEAVES1 (AS1) and AS2 in leaf development in Arabidopsis thaliana: KNOX genes control five morphological events.
(シロイヌナズナの AS1 と AS2 遺伝子による葉の発生制御ネットワークの研究:KNOX ホメオボックス遺伝子は5つの形態形成に関わっている) |
発表誌 |
The Plant Journal 61:70-82 (2010). |
要 旨 |
葉の構造は、大まかには、基部から先端へ向かう軸(托葉、葉柄、葉身)、表・裏の軸、左右相称性を作る軸という3つの軸としてとらえることができる。シロイヌナズナのアシンメトリック・リーブズ 1 (AS1) と AS2 遺伝子は、葉の形作りにおいて鍵となるような機能をしている。それは、これらいずれかの遺伝子に突然変異が入ると、これらの3つの軸に関連した構造がすべて異常になるからである。例えば、(1) これらの変異体では葉柄や葉身が短くなり、左右非対称な切れ込みができ、極端に下に巻いた葉身になる(図1 a や e を参照)。また、わずかに表側が裏側化している。(2) さらに、このような変異が起こると、細胞の未分化状態の維持に必要な3つのノックス (KNOX) 遺伝子や、葉の裏側化に関わっていると予想されている ETT/ARF3 などの遺伝子転写レベルが上昇する。(3) また、これらの変異体の葉を切り出し、ホルモンがない培地で培養するとシュートの再生効率が上昇し、根の再生は極端に低下する(野生型の葉からはシュートはできず、根のみ再生する)。
本研究では、上記した表現型のうち、どの表現型がノックス遺伝子の転写レベルの上昇によっているかを検討した。そのために、as1 や as2 変異体にさらに3つの KNOX に変異を導入して(つまり4重変異を作成し)、どの異常が回復するかを検討した。その結果、葉が短くなる表現型や根が再生しなくなる表現型など5種類の表現型だけが回復し、その他の表現型は回復しなかった(図1と図2)。さらに、回復した表現型でも、ジベレリンを介した過程と介していない過程がかかわっていることもわかった(図2)。
以上の結果は、as1 や as2 の変異体の表現型は KNOX 以外の遺伝子発現の上昇によると期待される。ここには ETT/ARF3 などが含まれ、現在これらがどのようにして葉の形作りに関わっているかを研究している。
図1:as1 や as2 変異により短くなった葉柄と葉身 (a, e) は、knox の三重変異(bp, knat2, knat6)を入れると回復した (d, f)。g パネルは野生型を示す。
図2:葉の形づくりにおいてAS1とAS2 が制御する表現型 (a) と想定遺伝子ネットワーク (b). 詳細は本文参照
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研究室HP |
http://www.bio.nagoya-u.ac.jp:8001/~yas/b2.html |
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