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  • 論文紹介【第5回論文紹介】
  • シロイヌナズナのシトクロムb5様ヘム/ステロイド結合タンパク質RLFは、
    ARF7/19を介したオーキシンシグナリングとは独立に側根形成をコントロールする

論文紹介

研究代表者 深城英弘
田坂昌生
所 属 神戸大学大学院理学研究科生物学専攻
奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科
著 者 Yoshifumi Ikeyama, Masao Tasaka and Hidehiro Fukaki
(池山芳史、田坂昌生、深城英弘)
論文題目

RLF, a cytochrome b5-like heme/steroid binding domain protein, controls lateral root formation independently of ARF7/19-mediated auxin signaling in Arabidopsis thaliana
(シロイヌナズナのシトクロムb5様ヘム/ステロイド結合タンパク質RLFは、ARF7/19を介したオーキシンシグナリングとは独立に側根形成をコントロールする)

発表誌 The Plant Journal 62: 865-875 (2010)
要 旨

 植物の根系は、発芽後に伸びる主根、地上部から発生する不定根、そして、これらの根から発生する側根から成り立っています。私たちは、シロイヌナズナから側根形成の能力が低下した新しい変異体を発見し、その根や地上部シュートの成長、植物ホルモンのオーキシンに対する応答、変異の原因遺伝子について調べました。この変異体は側根の形成頻度が野生型に比べて低いので、reduced lateral root formation (rlf)と名付けました。
 rlf変異体の原因遺伝子について調べたところ、シトクロムb5様ヘム/ステロイド結合タンパク質という、機能未知なタンパク質をコードすることがわかりました。また細胞内におけるRLFタンパク質の局在を調べたところ、細胞質に存在することが示されました。これまでの研究で、側根の形成にはオーキシンに対する応答、特にARF7、ARF19と呼ばれるオーキシン応答を促進する転写因子による遺伝子発現が重要と考えられていました。しかし、rlf変異体ではオーキシンの応答には特に異常がなかったことから、RLFタンパク質は、ARF7/19を介したオーキシンシグナリングとは独立に側根形成をコントロールしている因子であると考えられます。RLFタンパク質の機能について、さらに研究を進めることにより、植物の側根形成を制御するしくみが明らかになると期待されます。  

  

図:rlf変異体の表現型
(a) 12日目の野生型(Col)、rlf-1rlf-2変異体の芽生え。rlf変異体では側根形成領域における側根の形成頻度が少ない。スケールバーは1cm。
(a) 30日目の野生型(Col)とrlf-1変異体の地上部。rlf変異体では葉が小さく、茎丈も低い。スケールバーは1cm。

研究室HP

深城
http://www.research.kobe-u.ac.jp/fsci-fukaki/fukaki/top.html
http://www.edu.kobe-u.ac.jp/fsci-biol/staff/h-fukaki.html

田坂
http://bsw3.naist.jp/keihatsu/keihatsu.html