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  • 論文紹介【第5回論文紹介】
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    VASCULAR-RELATED NAC-DOMAIN7は道管細胞へと分化転換を効率的に誘導する

論文紹介

研究代表者 出村拓 所 属 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科・理化学研究所バイオマス工学プログラム
著 者 Masatoshi Yamaguchi, Nadia Goue, Hisako Igarashi, Misato Ohtani, Yoshimi Nakano, Jennifer C. Mortimer, Nobuyuki Nishikubo, Minoru Kubo, Yoshihiro Katayama, Koichi Kakegawa, Paul Dupree, Taku Demura
(山口雅利、Nadia Goue、五十嵐久子、大谷美沙都、中野仁美、Jennifer C. Mortimer、西窪伸之、久保稔、片山義博、掛川弘一、Paul Dupree、出村拓)
論文題目

VASCULAR-RELATED NAC-DOMAIN6 and VASCULAR-RELATED NAC-DOMAIN7 effectively induce transdifferentiation into xylem vessel elements under control of an induction system.
(誘導システムを用いることでVASCULAR-RELATED NAC-DOMAIN6およびVASCULAR-RELATED NAC-DOMAIN7は道管細胞へと分化転換を効率的に誘導する)

発表誌 Plant Physiology, in press
要 旨

 私たちはこれまでに、道管分化をマスター因子としてNACドメイン転写因子をコードするVND6、およびVND7を同定した(Kubo et al., 2005, Genes Dev.; Yamaguchi et al., 2008, Plant J)。
  そこで本研究では、これらマスター因子にヘルペルウイルスVP16の転写活性化ドメイン、およびラットのグルココルチコイドレセプタードメインを融合させることで、デキサメタゾン(DEX)依存的に活性が誘導されるコンストラクトを構築し、形質転換体を作出した。まず、シロイヌナズナに導入した形質転換体では、DEX処理することにより、植物体全体が白色化し死んでしまった。植物体を観察したところ、ほとんどの細胞が二次細胞壁を持つ道管細胞へと分化転換していた(図)。また、道管分化に関与する酵素や転写因子の多くがDEX処理により発現が誘導されており、二次細胞壁に多く含まれる多糖であるキシラン蓄積量も増加していた。さらに、このコンストラクトをシロイヌナズナやタバコの培養細胞やポプラに導入したところ、それぞれDEX依存的に分化転換した道管細胞が観察された。特に、タバコBY-2細胞において90%以上の細胞が分化転換するラインを確立することに成功した。

  これらの結果は、今回構築したコンストラクトが、道管細胞分化の分子機構を解析するうえで非常に有効であることを強く示している。

 

図:(A)発芽後7日目の芽生えを4日間記載された条件下で生育させた。VND6-VP16-GR、およびVND7-VP16-GRを導入した形質転換体では、DEX処理により白色化した。(B-D)DEX処理をしたVND6-VP16-GR (D) 、およびVND7-VP16-GR (B,C,E)では、孔辺細胞(B)やコルメラ細胞(C)、根毛(D)、トライコーム(E)でも二次細胞壁の肥厚が観察された。スケールバーは(A)1 cm、(B,C)20 μm、(D,E)50 μm。

研究室HP http://labs.psc.riken.jp/mrt/index.html