論文紹介

研究代表者 塚谷 裕一 所 属 東京大学大学院理学系研究科及び
基礎生物学研究所
著 者 Gorou Horiguchi, Nathalie Gonzalez, Gerrit T.S. Beemster, Dirk Inze, Hirokazu Tsukaya
(堀口吾朗、ナタリー・ゴンザレス、ゲーリット・ ビームスター、ディルク・インゼ、塚谷 裕一)
論文題目 Impact of segmental chromosomal duplications on leaf size in the grandifolia-D mutants of Arabidopsis thaliana
(シロイヌナズナのgrandifolia-D変異体における葉のサイズ増大は染色体の部分重複による)
発表誌 The Plant Journal(2009. 10. 1号掲載)Volume 60, Issue 1, 2009, Pages: 122-133
要 旨  私たちの身近にある農作物や園芸植物の多くは、 染色体の重複を利用して改良されています。例えば、ジャガイモや巨峰、鉢物のいわゆるデンドロビウムなどは、全ての染色体が重複して倍数化したものです。倍数化は一般的に、細胞サイズの大型化を起こし、これがひいては器官サイズを大型化させるため、こうした品種改良に利用されてきました。ま た、このような倍数化は自然条件下でも植物では普通で、植物の様々な種が進化してきた一つの要因と考えられています。
今回私たちと立教大学、ベルギー大学との共同研究チームは、シロイヌナズナからgra-Dと名付けた大型の葉を付ける突然変異株を解析した結果、染色体の一部が重複していたことを見いだしました (図)。面白いことに倍数体の場合と異なり、gra-D の細胞サイズは正常で、細胞数のみが野生株の2〜3倍にまで増加していました。重複を起こした染色体には、ANTとCYCD3;1という細胞増殖を促進する事が知られている遺伝子が存在しています。野生株を用いて、これらの遺伝子の発現レベルをそれぞれ高めてみると、細胞数の増加をある程度再現できますが、 その効果は限定的です。一方、この2つの遺伝子の 発現を同時に高めると、gra-Dの変異体のような、劇的な細胞数の増加が引き起こされる事が確認されました。この研究は、植物のサイズ制御、細胞数制御、細胞サイズ制御、そしてゲノムの重複の間の関係を解く上で重要な発見といえます。
図1
研究室HP http://www.nibb.ac.jp/%7Ebioenv2/indexj.html
http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/bionev2/top_j.html