論文紹介
研究代表者 |
町田泰則 |
所 属 |
名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻 |
著 者 |
Chen, Y., Asano, T., Fujiwara,
M.T., Yoshida, S., Machida, Y., and Yoshioka, Y.
(陳玉玲、浅野智哉、藤原誠、吉田茂男、町田泰則、吉岡泰) |
論文題目 |
Plant cells without detectable plastids are generated in the
crumpled leaf mutant of Arabidopsis thaliana
(シロイヌナズナの crumpled leaf 変異体ではプラスチドが検出されない細胞が出現する)
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発表誌 |
Plant & Cell Physiology
50, 956-969 (2009) |
要 旨 |
色素体は葉緑体に分化して光合成を行うのみならず、アミノ酸、脂質、植物ホルモンの合成にも関与する植物細胞にとって必須の細胞内小器官である。生殖細胞において色素体を持たない細胞が生じる例は知られているものの、植物の体細胞において色素体をもたない細胞が存在しうるのかは長い間不明であった。この論文では、色素体局在
GFP タンパク質を用いた色素体の可視化、および蛍光色素による色素体ゲノム DNA の染色、いずれの方法を用いても、シロイヌナズナの色素体分裂変異体の1つ
crumpled leaf (crl) の体細胞には色素体が検出できない細胞が存在する事を示した。さらに、数が減少した色素体が細胞分裂中に不均等に分配されるために、crl
変異体では色素体を持たない細胞が生じている事を明らかとした。多くの場合、色素体分裂が阻害されても植物の形態・生長は影響をうけない。例えばシロイヌナズナの
arc6 は、crl 変異体と同程度に色素体分裂が阻害されている変異体であるが、arc6
変異体の形態・生長は野生型とほぼ同じである。これに対して crl 変異体は顕著な形態と生長の異常を示す数少ない色素体分裂変異体である。色素体を持たない細胞が
arc6 変異体に存在するのかを調べたが、そのような細胞はみつからなかった。この事から色素体を持たない細胞が生じている事が、crl
変異体が示す形態・生長異常の原因の一つではないかと考えられた。
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図1 シロイヌナズナ crl 変異体に存在する色素体が検出されない細胞
色素体局在 GFP タンパク質(緑)、ミトコンドリア局在 DsRed タンパク質(赤)、DAPI 染色した
DNA(青)の蛍光を重ねて表示してある。左が野生型(WT)、右がcrl変異体の細胞。それぞれの細胞の中央に見える大きな青い蛍光は核
DNA。それ以外の小さな青い蛍光は細胞小器官のゲノム DNA。crl 変異体の細胞ではすべての細胞小器官の
DNA がミトコンドリア局在 DsRed の蛍光を重なっている。スケールは 5 mm。
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研究室HP |
http://www.bio.nagoya-u.ac.jp:8001/~yas/b2.html |
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