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  • 論文紹介【第2回論文紹介】
  • プロモーター交換実験で明らかになったシロイヌナズナ・オーキシン信号伝達系で働く
    Aux/IAA遺伝子族構成遺伝子(MSG2/IAA19とAXR2/IAA3とSLR/IAA14)の機能の特異性と類似性

論文紹介

研究代表者 山本興太朗 所 属 北海道大学理学研究院生命理学部門
著 者 Muto, H., Watahiki, M. K., Nakamoto, D., Kinjo, M., Yamamoto, K. T.
(武藤秀樹、綿引雅昭、中本大介、金城政孝、山本興太朗)
論文題目 Specificity and similarity of functions of the Aux/IAA genes in auxin signaling of Arabidopsis revealed by promoter-exchange experiments between MSG2/IAA19, AXR2/IAA3 and SLR/IAA14.
(プロモーター交換実験で明らかになったシロイヌナズナ・オーキシン信号伝達系で働くAux/IAA遺伝子族構成遺伝子(MSG2/IAA19とAXR2/IAA3とSLR/IAA14)の機能の特異性と類似性)
発表誌 Plant Physiology 144, 187-196, 2007
要 旨  Aux/IAAはオーキシン信号伝達系で働くタンパク質です。オーキシンはさまざまな生理現象に関与していますが、シロイヌナズナに29種類あるAux/IAAのどれが優性変異を起こすかによって、さまざまな組み合わせで生理現象の異常が起こります。このようになる原因としては、Aux/IAA遺伝子のプロモーター活性とAux/IAAタンパク質自身の性質の両方が一つひとつのAux/IAAによって少しづつ違うからだと考えられますが、ではこの二つのどちらが重要なのでしょうか。この点を調べるために、Aux/IAAの中の三つのタンパク質、IAA19とIAA7とIAA14を選んで、それを二つの遺伝子(IAA19IAA7)のプロモーターで発現させる形質転換体を作ってみました。そして12の性質について比較したところ、7割の性質については同じプロモーターで駆動させればどのタンパク質も似た作用を示したのに対し、残りの3割の性質については、同じプロモーターで発現させても発現させられたタンパク質によって異なる異常が起こりました。この結果を見ると、Aux/IAAがどの細胞に発現するのかということだけでなく、Aux/IAAタンパク質それ自体の性質も、ということはAux/IAAのオーキシン受容体の基質としての性質や、一緒に働くタンパク質との相互作用の強さも、オーキシン信号伝達系の性質を決めるのに重要であることが分かります。
図1図1 4週間栽培した野生型シロイヌナズナとその形質転換体。全部、同じ大きさのポットに植えてある。「プロ」は、プロモーターの略。同じIAA7プロモーターで発現させても変異型IAA7と14タンパク質だけが形態の矮化を引き起こす。一方、IAA19プロモーターで発現させるとどの変異タンパク質もあまり強い異常を引き起こさない。
図2図2 3日間栽培した野生型と形質転換体の芽生え。「プロ」は、プロモーターの略。 IAA19 プロモーターで変異型IAA19タンパク質を発現させても異常は起こらないのに、変異型 IAA7や14を発現させると子葉ができなくなる(上段)。下段左図は子葉形成に異常の起こった胚。下段右図は、GUSレポーターを用いて調べた胚での IAA19 遺伝子発現部位。青色部位(子葉原基)に発現していると考えられる。スケールバーは、1mm(上段)と1マイクロm(下段)。
研究室HP http://bio2.sci.hokudai.ac.jp/bio/keitai1/Welcome.html