論文紹介

研究代表者 深城英弘
田坂昌生
所 属 神戸大学大学院
理学研究科生物学専攻

奈良先端科学技術大学院
大学バイオサイエンス研究科
著 者 Takeo Uehara, Yoko Okushima, Tetsuro Mimura, Masao Tasaka, and Hidehiro Fukaki
(上原健生、奥島葉子、三村徹郎、田坂昌生、深城英弘)
論文題目 Domain II mutations in CRANE/IAA18 suppress lateral root formation and affect shoot development in Arabidopsis thaliana.
(CRANE/IAA18のドメインII変異はシロイヌナズナの側根形成を抑制しシュートの発生に影響を及ぼす)
発表誌 Plant Cell Physiol. 49:1025-1038
要 旨  植物の根系は、発芽して最初に伸びる主根、地上部から発生する不定根、そして、これらの根から発生してくる側根などから成り立っています。
私たちは、モデル植物シロイヌナズナから側根形成の能力が低下した変異体を発見し、その根や地上部の成長、植物ホルモンの一種であるオーキシンに対する反応、変異の原因となっている遺伝子の発現などを調べました。この変異体は地上部の形が表紙の写真のような折り鶴に似ているので、craneと名付けました(ツルは英語でcraneといいます)。
 crane変異体の原因遺伝子について詳しく調べたところ、オーキシンの情報伝達に働くAux/IAAというタンパク質ファミリーの一員であるIAA18が分解されにくくなっている可能性があることが分かりました。crane変異体で側根形成能が低下しているのは、IAA18タンパク質 が安定化したことによって、ARFとよばれる側根形成を誘導する別のタンパク質の機能をつねに抑えていることが原因だと考えられます。このことは、野生型のシロイヌナズナでは IAA18タンパク質が側根の形成に重要な役割をもっていることを示しています。 今回の研究やこれまでの研究により、シロイヌナズナの側根やイネの冠根の形成を制御するしくみが明らかになりつつあります。これらの研究成果から、栽培作物の根系の発達を自由に制御し収量を増やす技術につながることが期待されます。
図1図 シロイヌナズナ野生型(Col)とcrane変異体の表現型
野生型 (Col)、crane-1crane-2slr-1変異体。 crane変異体の側根形成能は顕著に低下している。slr-1変異体は側根形成能を失った変異体。(B) 発芽後1ヶ月後の野生型 (Col) と crane-2変異体。 crane変異体はやや矮性を示す。 (C, D) 発芽後15日目の野生型 (Col) (C)と crane-2変異体 (D) の地上部。crane変異体の胚軸は野生型よりも長い。(E) 野生型 (Col) と crane-2変異体のロゼット。crane 変異体では葉が上向きにカールする(下偏成長する)。
研究室HP 深城 http://www.research.kobe-u.ac.jp/fsci-fukaki/fukaki/top.html
     http://www.edu.kobe-u.ac.jp/fsci-biol/staff/h-fukaki.html
田坂 http://bsw3.naist.jp/keihatsu/keihatsu.html