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  • 論文紹介【第2回論文紹介】
  • シロイヌナズナの EMBRYO YELLOW 遺伝子は、保存されたオリゴマーゴルジ(COG)複合体のサブユニットをコードし、
    適切な細胞伸長とメリステムの構築に必要である

論文紹介

研究代表者 町田泰則 所 属 名古屋大学理学研究科生命理学専攻
著 者 Takaaki Ishikawa, Chiyoko Machida, Yasushi Yoshioka, Takashi Ueda, Akihiko Nakano and Yasunori Machida
(石川貴章、町田千代子、吉岡泰、上田貴志、中野明彦、町田泰則)
論文題目 The EMBRYO YELLOW gene, encoding a subunit of the conserved oligomeric Golgi complex, is required for appropriate cell expansion and meristem organization in Arabidopsis thaliana
(シロイヌナズナの EMBRYO YELLOW 遺伝子は、保存されたオリゴマーゴルジ(COG)複合体のサブユニットをコードし、適切な細胞伸長とメリステムの構築に必要である)
発表誌 Genes to Cells 13, 521-535 (2008)
要 旨  本変異体は、シロイヌナズナにおいて胚の段階で発生が停止する変異体を探索する過程で得られた。種子成熟の過程で、野生型よりも早く種子が黄化することから、この変異を embryo yellow (eye) と名付けた。しかし、ホモ変異体の10%が発芽し、茎頂端に小さな葉を多数出現させ、成長は停止した(図1D)。また、茎頂メリステムがほとんど発達せず、個体表面では、細胞が丸く突出していた(H)。個体を TB-法(植物体の表面の親水性の度合いを調べるために、トルイジンブルーで染色する方法)で染色したところ、野生型ではまったく染色されないが、eye 変異体は全体が強く染色された(F)。したがって、eye 個体の表皮細胞ではワックスやクチクラ層が欠失していると考えられる。
 eye 変異の原因遺伝子をクローニングした。EYE タンパク質のアミノ酸配列は、ヒトとショウジョウバエで保存されている Conserved oligomeric Golgi complex (Cog 複合体) サブユニットの一つである Cog7 のアミノ酸配列と類似していた。マーカータンパク質を使ってゴルジ体の形態を調べたところ、ゴルジ体が小型化していた(図2)。さらに、野生型ではゴルジ体へ輸送されるマーカータンパク質が、eye 変異体では小胞体にも局在していた(図2B)。eye 変異体では、ゴルジ体機能に何らかの不全が生じていると考えられる。動物の Cog7 は、タンパク質の輸送や糖鎖付加反応、さらに糖脂質の代謝に関わっている。eye 変異体でもこれらの反応に異常がある可能性がある。
 以上の知見を総合すると、適切な細胞形態の分化とメリステムの構築には、ゴルジ体の機能が必須であると考えられる。おそらく、ゴルジ体機能により支持されている細胞間相互作用が必須であると考えられる。
図1図1 eye 変異体の植物体の形態と細胞形態及び細胞表面の特徴
 AとB は、発芽直後の幼植物(WT:野生型、eye: 変異体)。Cは、花芽が出現する直前の野生型の植物体。D は同じ時期の eye 変異体。多数の葉が見られた。E と F は、C と D のそれぞれの植物体を TB テストしたもの。Gと H は、胚軸の表皮細胞の形を観察したもの。
図2図2 ゴルジ体マーカータンパク質(ERD2-GFP融合タンパク質)の局在異常
  野生型とeye 変異体の胚の細胞における ERD2-GFP 由来の蛍光を蛍光顕微鏡で観察した。黄色い線は、細胞のアウトラインを示す。
研究室HP http://www.bio.nagoya-u.ac.jp:8001/~yas/b2.html