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  • 論文紹介【第1回論文紹介】
  • シロイヌナズナの向軸側での ASYMMETRIC LEAVES2 遺伝子の発現は、
    この領域の細胞増殖を抑制すると同時に葉の適切な展開に必要である

論文紹介

研究代表者 町田泰則 所 属 名古屋大学 理学研究科生命理学専攻
著 者 Hidekazu Iwakawa, Mayumi Iwasaki, Shoko Kojima, Yoshihisa Ueno, Teppei Soma, Hirokazu Tanaka, Endang Semiarti, Yasunori Machida and Chiyoko Machida.
(岩川秀和、岩崎まゆみ、小島昌子、上野宜久、相馬徹平、田中博和、Endang Semiarti、町田泰則、町田千代子)
論文題目 Expression of the ASYMMETRIC LEAVES2 gene in the adaxial domain of Arabidopsis leaves represses cell proliferation in this domain and is critical for the development of properly expanded leaves.
(シロイヌナズナの向軸側での ASYMMETRIC LEAVES2 遺伝子の発現は、この領域の細胞増殖を抑制すると同時に葉の適切な展開に必要である)
発表誌 Plant Journal 51, 173-184 (2007)
要 旨  多くの陸上植物の葉は扁平な形をしている。私たちは、それがどのような遺伝子の働きにより作られるのかを研究している。葉は茎の上部にある成長点の周辺から発生し、発生初期の葉は棒状であるが、成長とともに表(向軸面と呼ばれている)と裏(背軸面と呼ばれている)の分化が起こる。それにともなって、葉の横方向への細胞分裂が起こり、扁平な葉が作られると言われている。このようにして作られる葉は、基本的には3つの軸性をもっている。つまり、基部(茎に近い部分)から先端部への軸、表から裏への軸、主脈を対称軸とする左右軸である。したがって、私たちは、葉の形作りを、このような軸に沿った遺伝子の作用として研究している。現在、私たちはアシンメトリック・リーブ 1 (AS1) と 2 (AS2) と呼ばれている遺伝子に注目して研究している。これらは、研究当初は葉の左右相称性に関わる遺伝子として同定されたが、多面的な葉の形成にも関わっていることがわかってきた。今回の論文では、AS2遺伝子が葉の表側領域で、AS1は葉の内部領域で発現していることを報告した(図1)。さらに、両遺伝子が横方向への細胞分裂に、また葉の裏側の分化に必要な遺伝子(例えば ETTIN, KNA2 など)に対して抑制的な役割を演じていることを示した(図2)。以上から、AS2 は葉の表側で、裏側化に関与している遺伝子の発現を抑えることにより葉の表側の分化に関わっていると推察される。また、このような葉の分化と横方向への細胞分裂との関連性も伺われる。。
図1図1AS2AS1 の発現領域
(a), (b), AS2 AS1in situ ハイブリダイゼイション. 赤紫又は茶色がシグナルで、AS2 は葉の向軸側で、AS1のシグナルは内側の中央で観察された。(b), (c), 子葉と第一葉におけるpAS2:GUSレポーター遺伝子の発現領域(青色):葉の向軸側で強いシグナルが見える。(e), (f) pAS1:GUS の発現領域(青色):葉の内側の中心領域あるいは維管束に沿って強いシグナルが見える。
図2図2 AS1 と AS2 により影響を受ける遺伝子  
as1 変異体、 as2 変異体、AS1プロモータにAS2 cDNA を連結したキメラ遺伝子をas2 変異体に導入した株、野生型株(Col-0)のそれぞれの茎頂から mRNA を調整し、横軸の下に記載した遺伝子の mRNA を、リアルタイム・RT-PCR 法により定量した。縦軸に、Col-0 に対する相対量で示した
研究室HP http://www.bio.nagoya-u.ac.jp:8001/~yas/b2.html