論文紹介

研究代表者 島本 功 所 属 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科
著 者 Shojiro Tamaki, Shoichi Matsuo, Hann Ling Wong, Shuji Yokoi,* Ko Shimamoto
(玉置祥二郎、松尾祥一、Hann Ling Wong、横井修司、島本功)
論文題目 Hd3a Protein Is a Mobile Flowering Signal in Rice.
(Hd3aタンパク質はイネにおける移動性の花成誘導シグナルである)
発表誌 Science Vol. 316. no. 5827, pp. 1033 - 1036、18 May 2007
要 旨  植物は、日長の変化を葉で感じ取り茎の先端で花をつけるかどうかを決定することが知られている。このことは日長の変化を感じ取った葉から信号として茎の先端へと伝える物質の存在を示唆している。この物質のことを花成ホルモンーフロリゲンと呼んだが、その実体は長く不明であった。イネは、短日(一日の日の長さが夜よりも短い)条件において花成が促進される短日植物である。Hd3a遺伝子は、短日条件のイネの花成において重要であることは知られていたが、それ以外は不明な点が多くあった。私たちは、Hd3a遺伝子がイネの花成をどのように促進しているかを明らかにすることを目的とした研究を行った。まず、Hd3a遺伝子がイネのどこで発現しているかを調べたところ、葉の維管束周辺に特異的に発現していることが明らかとなった。次にHd3a遺伝子がコードしている産物の挙動をmRNAおよびタンパク質のレベルで確認した。Hd3a mRNAの移動は確認できなかった。Hd3aタンパク質と緑色蛍光を発するタンパク質(GFP)を融合させたタンパク質をイネの維管束のみで発現させた形質転換体は早咲きの表現型を示し、このイネの茎の先端を観察すると、茎の先端で緑色蛍光が観察された。この結果から私たちはHd3aタンパク質が維管束から茎の先端へ移動し花成を誘導していると結論付け、さらにHd3aタンパク質こそがフロリゲンの実体であると結論付けた。
図1図1Hd3a:GFPを発現しているイネの茎頂分裂組織およびその周辺の縦断切片写真緑色のHd3a:GFPの蛍光が茎頂分裂組織で観察される。
図2図2 短日条件におけるイネの花成誘導モデル
短日条件下のイネの葉において特異的に発現誘導されるHd3aはタンパク質に翻訳されたのち、維管束組織を通じて茎頂分裂組織に運ばれ花成を誘導していると考えられる
研究室HP http://bsw3.naist.jp/simamoto/simamoto.html