論文紹介

研究代表者 田坂昌生/深城英弘 所 属 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科/神戸大学大学院理学研究科生物学専攻
著 者 Atsuko Hirota, Takehide Kato, Hidehiro Fukaki, Mitsuhiro Aida, and Masao Tasaka.
(廣田敦子、加藤壮英、深城英弘、相田光宏、田坂昌生)
論文題目 The auxin-regulated AP2/EREBP gene PUCHI is required for morphogenesis in the early lateral root primordium of Arabidopsis.
(オーキシンで発現調節されるAP2/EREBP遺伝子PUCHIはシロイヌナズナの側根形成初期の形態形成に関与する)
発表誌 Plant Cell 19: 2156-2168 2007.
要 旨  植物は土の中にたくさんの根を張りめぐらすことで、みずからの体をしっかりと固定し、土中の水分やミネラルを効率よく吸収する。地下で複雑に枝分かれした根は、大きく分けて主根(しゅこん)と側根(そっこん)の2つの部分からなり、種子が発芽してまず最初に伸びてくるのが主根で、根の内部から発芽後に作られてくるのが側根だ。植物ホルモンの1つであるオーキシンは、側根の数を増やす作用がある。最近の私たちのグループによる研究で、オーキシンの信号を伝えて側根の形成を促す働きをもつ遺伝子が、見つかっていた。 しかし、側根の形づくりそのものがどのような遺伝子の働きによって調節されるのかは、全く分かっていなかった。そこで私たちは側根の基部が異常に発達して「こぶ」のようになるシロイヌナズナの突然変異体に着目した(図1)。この変異体では私たちがPUCHIと名付けた遺伝子に変異が起きており、これが原因で側根の形が異常になることがわかった。AP2/EREBP型の転写因子と考えられるPUCHIタンパク質は、側根の発達の早い段階で働いて、細胞分裂のパターンをととのえることで、正常な形の側根を作るのに役立っている (図2)。また、PUCHI遺伝子の働きはオーキシンシグナルにより活性化される。 これらの結果から、オーキシンの指令を受けて側根の形づくりに働く遺伝子の1つが初めて明らかになった。
図1図1PUCHI遺伝子に変異が起きると側根の基部がこぶのようにふくらむ(右)。左は正常な植物体の側根。
図2図2 PUCHIタンパク質を蛍光タンパク質GFPで可視化した(左)。発達初期の側根で緑色のシグナルが見られる(矢印)。その後、PUCHIタンパク質は発達中の側根の基部に局在する(右上)。puchi変異体では側根の基部がふくらむ(右下)。
研究室HP 田坂 http://bsw3.naist.jp/keihatsu/keihatsu.html
深城 http://www.research.kobe-u.ac.jp/fsci-fukaki/fukaki/top.html
    http://www.edu.kobe-u.ac.jp/fsci-biol/staff/h-fukaki.html