論文紹介

研究代表者 出村 拓

福田裕穂
所 属 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科
理化学研究所植物科学研究センター

東京大学大学院理学系研究科
著 者 Satoshi Endo, Edouard Pesquet, Masatoshi Yamaguchi, Gen Tashiro, Mayuko Sato, Kiminori Toyooka, Nobuyuki Nishikubo, Makiko Udagawa-Motose, Minoru Kubo, Hiroo Fukuda, and Taku Demura
(遠藤暁詩、Edouard Pesquet、山口雅利、田代玄、佐藤繭子、豊岡公徳、西窪伸之、本瀬 (宇田川) 真樹子、久保稔、福田裕穂、出村拓)
論文題目 Identifying New Components Participating in the Secondary Cell Wall Formation of Vessel Elements in Zinnia and Arabidopsis
(ヒャクニチソウとシロイヌナズナにおいて道管要素の二次細胞壁形成に関わる新奇構成因子の同定)
発表誌 Plant Cell in press (Plant Cell 10.1105/tpc.108.059154)
要 旨  植物の木部細胞は厚い細胞壁(二次細胞壁)をもっています。この二次細胞壁は主に多糖類であるセルロースとヘミセルロース、そしてポリフェノールの一種であるリグニン(合わせてリグノセルロース)からなります。近年、リグノセルロースのエネルギー利用が脚光を浴びていますが、形成のメカニズムは最近まであまりよく分かっていませんでした。私たちはこれまでにヒャクニチソウやシロイヌナズナの特殊な培養細胞系を用いて、二次細胞壁の形成時に働く遺伝子の網羅的な同定と機能解析を進め、転写因子であるVND遺伝子群が二次細胞壁形成のマスター遺伝子として働くことを突き止めました(Kubo et al., Genes Dev, 2005; Yamaguchi et al., Plant J, 2008)。
 この論文では、機能が未解明の遺伝子の機能解析を行いました。ヒャクニチソウの培養細胞で、2種類の互いによく似た新奇の膜タンパク質(TED6、TED7)の発現を抑制すると二次細胞壁形成が阻害され、逆にその発現を高めると二次細胞壁形成が促進されることを見出しました。さらにシロイヌナズナでも同じタンパク質の発現を抑制すると木部細胞である道管の二次細胞壁形成が特異的に阻害されました。また、この膜タンパク質がセルロース合成酵素複合体の活性サブユニットIRX3タンパク質と相互作用することがわかりました。
図1図1 TED6とTED7遺伝子の機能解析
(A) ヒャクニチソウ(Ze)のTED6とTED7タンパク質の構造。TM:膜貫通ドメイン。両タンパク質はC末ドメインが互いに似ている。
(B) Ze TED6とTED7の二本鎖RNA(dsRNA)をヒャクニチソウの培養細胞に取り込ませると二次細胞壁をもった細胞(Cells with visible SCWs)の比率が低下した。
(C) Ze TED6とTED7を同時にヒャクニチソウ培養細胞で高発現させたところ二次細胞壁をもった細胞(Cells with visible SCWs)の比率が上昇した。
図2図2 BiFC解析によるシロイヌナズナ(At)TED6とIRX3の相互作用の証明
シロイヌナズナの葉でパーティクルボンバードメント法によって下記のタンパク質を発現させた。
(A) AtTED6-YFP(黄色蛍光タンパク質)
(B) YFP-IRX3
(C) BiFC解析。AtTED6-cYFP(C末側YFP)とnYFP(N末側YFP)-IRX3によってYFPの蛍光が観察されたことから、AtTED6とIRX3が相互作用していることが示された。
研究室HP http://labs.psc.riken.jp/mrt/index.html
http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/seigyo/lab.html