研究内容


 名古屋大学・菅島臨海実験所(NU-MBL)は2021年7月より新教員が2人加わり、現在は5つの研究チームが連携しながらマクロ生物から有機化学まで様々な視点から海洋生物学の研究を推進しています。学生のみなさん、私たちと一緒に研究・調査しませんか?



生物多様性・系統進化学チーム(自見直人)

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この世界にはどこにどれだけの生物が、どのような形質(形や遺伝子等)を持っていて、どのような暮らしをしているのでしょうか。それらを把握することは生物多様性を保全し、人間社会が生物から恩恵を得て共生していくために必須です。海産無脊椎動物の形や遺伝子を調べ既知種と比較し、今まで知られていない種であれば新種として記載し、整理することで生物多様性の把握を目指します。また、生物の多様な形態や生態がどのように進化してきたかを、薄片切片・電子顕微鏡・CTによる微細構造の観察や水槽での飼育観察による共生関係等の生態把握によって明らかにしていきます。


生物多様性・系統進化学チーム


海洋生物化学チーム(森田真布)

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物質は、生物の生き様に深く関わっています。海洋生物からは、陸上生物とは異なる構造・機能の有機化合物が数多く発見されてきました。これらの物質は、医薬品候補として創薬に貢献してきた一方で、海洋生物がなぜ・どのようにユニークな有機化合物を生産するのか、という根本的な問いについてはほとんど分かっていません。最近では、海洋生物がもつ有機化合物が化学防御や共生、形態形成などに関わっていることが示唆されており、当チームは、付着性の無脊椎動物や藻類など「動けない」海洋生物の生存戦略に注目しています。化学分析や生化学実験、遺伝子解析の手法を使って、非モデル生物の共生や形態、化学防御に関わる有機化合物の探索とその生合成遺伝子の同定を目指します。





海洋細胞生物学チーム(五島剛太)

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海には多様な生物種が生息し、その中には細胞レベルで陸上生物とは大きく異なる特徴を有するものも多くいます。たとえば細胞分裂はすべての生物にとって基盤的な活動ですが、このプロセスにおいてですら海藻では「常識外れ」の様式が存在することが示唆されています。これらを理解する上で、陸上生物のモデル細胞種を用いた研究で得られた知見をそのまま当てはめることはできません。当チームは海藻と海生真菌類の細胞レベルでの研究を目指しています。たとえば、海藻細胞内での動態や、あるいは独自の様式を司る遺伝子(タンパク質)についての知見は多くありません。細胞骨格、染色体の動態観察や必要遺伝子の同定を通じて海藻の一見独自の細胞分裂の仕組みを明らかにすることが当面の目標のひとつです。酵母や糸状菌を含む真菌類はパンやビールの原料としてだけではなく、有用抗生物質の単離や、細胞の基盤制御機構の解明など、広く生物学、医学に貢献をしてきました。これまで細胞生物学研究で主に用いられてきたのは出芽酵母S. cerevisiae、分裂酵母S. pombe、糸状菌A. nidulansなどの限られた種です。しかし、海には多様な真菌類が生息し、モデル真菌とは全く異なる細胞の成長や分裂を示すことがあることが最近の研究でわかってきました。菅島臨海実験所の近海にも多様な真菌類が生息していることが確認されています。真菌類を採取し、その細胞動態の理解や新規生理活性物質の単離を目指します。


海洋細胞生物学チーム


分子生物学的技術の開発(白江麻貴)

海には興味深い特徴を持つ生物が数多く存在しますが、それらを現代の分子生物学的手法で解析していくためには、それぞれの生物に最適化した技術を開発する必要があります。現在は主に海藻を対象として、室内培養や、分子機能解析・分子イメージングを実現するための技術開発を行っています。


分子生物学的技術の開発


海洋調査 (福岡雅史)

変動する環境に応じて海洋生物の種数や出現時期にどのような変化が見られるかを調査しています。現在は実験所の前の海水温、塩分濃度を毎日計測するとともに、潜水による藻類のモニタリングや環境DNA法による魚類の調査を行っています。今後、海産無脊椎動物(ベントス)にも調査対象を広げていく予定です。情報の一部はFacebookで公開しています。

>>2014年からの観測記録


海洋調査

>>研究業績