論文紹介

研究代表者 矢崎一史 所 属 京都大学生存圏研究所
著 者 Kazufumi Yazaki, Nobukazu Shitan, Akifumi Sugiyama, Kojiro Takanashi
(矢崎一史、士反伸和、杉山暁史、高梨功次郎)
論文題目 Cell and molecular biology of ATP-binding cassette proteins in plants
(植物におけるATP結合カセット蛋白質の細胞および分子生物学)
発表誌 International Review of Cell & Molecular Biology. (2009, in press)
要 旨  ATP結合カセット (ABC) 蛋白質は、多様性に富んだ膜結合性および可溶性蛋白質からなる大きなスーパーファミリーを形成している。これらは原核生物から真核生物まで全ての生物種に存在し、様々な生物学的プロセスに関与していることが知られている。シロイヌナズナやイネなどのモデル植物のゲノム解析から、植物は動物や昆虫のゲノムに比べて、2倍以上のメンバーを擁するファミリーとなっていることが明らかにされた。特に近年、植物におけるABC蛋白質の生物学的、生理学的機能の多様性が次々に報告されるようになってきた。植物ABC蛋白質には、生物学的ならびに物理的なストレスから植物を守ることに関与するメンバーが知られる一方、いくつかのメンバーについては、植物の生命維持に必須となる根本的な役割を果たしているものもある。ここでは細胞生物学的な視点から、植物ABC蛋白質の最新のインベントリーを紹介し、それぞれの発現組織特性、膜局在性、そして生理学的な役割について、まとめた。
図1
図1 シロイヌナズナの根におけるオーキシンの極性輸送と、それに関わる膜輸送体、特にオーキシン輸送性ABC蛋白質 AtABCB1 (AtPGP1)、AtABCB19 (AtPGP19)、AtABCB4 (AtPGP4)を中心に図示した。近年 ABC蛋白質 とPINとが相互作用による輸送特性への影響が報告されており、同じ細胞での両蛋白質の共発現が注目されている。
研究室HP http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/W/LPGE/