論文紹介

研究代表者 西谷和彦 所 属 東北大学 大学院生命科学研究科
著 者 Kasumi Kurasawa, Akihiro Matsui, Ryusuke Yokoyama, Tomoko Kuriyama, Takeshi Yoshizumi, Minami Matsui, Keita Suwabe, Masao Watanabe and Kazuhiko Nishitani
(倉澤香澄、松井章浩、横山隆亮、栗山朋子、吉積毅、松井 南、諏訪部圭太、渡辺正夫、西谷和彦)
論文題目 The AtXTH28 gene, a xyloglucan endotransglucosylase/hydrolase, is involved in automatic self-pollination in Arabidopsis thaliana
( エンド型キシログルカン転移酵素/加水分解酵素遺伝子, AtXTH27はシロイヌナズナの自動同花受粉に関与している)
発表誌 Plant and Cell Physiol. 50: 413-422 (2009)
要 旨  被子植物が自動同花受粉を首尾よく行うには、生殖器官の正常な発生が必要である。雄蕊についてみると、受粉時に葯が正確な位置で柱頭に接触できるように花糸が適正に成長しなければならない。この花糸の成長は、花糸を構成する細胞の細胞壁の力学的性質に依存するところが大きい。エンド型キシログルカン転移酵素/加水分解酵素(XTH)は、植物の様々な組織において、キシログルカン架橋の構築や再編過程を触媒し、その過程を通して細胞壁の伸展性すなわち力学的性質を調節している。今回,我々は逆遺伝学的解析により、シロイヌナズナのXTH遺伝子の一つAtXTH28の欠損変異体において、同花受粉機能が低下していることを明らかにした。この機能低下は花糸の成長不全に起因すると推測される。また,この研究より,AtXTH28に最も近縁のパラログであるAtXTH27との間で,両者の機能重複が無いことも示唆された。これらの結果は、AtXTH28がシロイヌナズナの花糸の成長において特異的な役割を担い、特定の花において自動同花受粉に必須であることを示している。
図1図1 AtXTH28 の欠損変異体, atxth28 の表現型。 (A) atxth28の第2花の雌蘂にatxth28の花粉を人工受粉するスキーム (B) 人工受粉され第2花が結実し正常な長角果が生じた。(C) 第2花を人工受粉したatxth28の第1〜3花の長角果長。7個体の平均と標準偏差
図2
図2 野生型とatxth28の受粉過程の比較. (A) 受粉過程のアニリンブルー染色像. Bar = 100 μm. (B) 野生型とatxth28のそれぞれの第2〜3花(proximal)と第8〜10花(distal)柱頭に於ける発芽している花粉の数のヒストグラム。20個体以上の測定結果
研究室HP http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/nishitani_lab/