論文紹介

研究代表者 島本 功 所 属 奈良先端科学技術大学院大学 
バイオサイエンス研究科
著 者 Yekti Asih Purwestri, Yuka Ogaki, Shojiro Tamaki, Hiroyuki Tsuji, and Ko Shimamoto 
(Yekti Asih Purwestri、大垣友香、玉置祥二郎、辻寛之、島本功)
論文題目 The 14-3-3 Protein GF14c Acts as a Negative Regulator of Flowering in Rice by Interacting with the Florigen Hd3a.
(14-3-3タンパク質GF14cはフロリゲンHd3a と相互作用してイネの花成を抑制する因子である)
発表誌 Plant Cell Physiol. 2009 50: 429-438
要 旨  フロリゲンは花芽形成に最適な日長になると葉で合成され、茎頂へ移動して花成を開始させる分子である。その分子的な実体はHd3a/FTと呼ばれるタンパク質であった。Hd3aは分子量22kD程の球状の構造をしており、それ自体には機能を予測できるようなドメイン等を持たないため、他のタンパク質との相互作用を介してフロリゲンとしての機能を発揮すると考えられている。私たちは酵母two-hybrid法を用いてHd3aと相互作用するタンパク質をスクリーニングし、イネの14-3-3タンパク質GF14cがHd3aと相互作用することを見いだした。GF14cの細胞内局在をGFP融合タンパク質を用いたイネプロトプラストへの一過的遺伝子発現系によって調べたところ、GF14cは主に細胞質に局在することが明らかとなった。さらにHd3aとGF14cの複合体の細胞内局在をBiFC法によって調べたところ、この複合体は主に細胞質に存在することが明らかとなった。GF14cの花成に対する機能を調べるために、GF14cの過剰発現イネ及びT-DNA挿入変異体の表現型を観察したところ、GF14cの過剰発現では花成が遅延し、T-DNA挿入変異体では花成が促進した。こららの結果から、GF14cは花成の抑制因子であると考えられた。これまでにHd3a/FTは核内でbZip型転写因子FD等と相互作用して花メリステムアイデンティティ遺伝子の発現に寄与すると考えられてきた。GF14cはHd3aと相互作用してHd3aを細胞質へ局在させることで、こうしたプロセスを阻害する可能性が考えられる。
図1
図1 イネのフロリゲンHd3aは14-3-3タンパク質GF14cと細胞質で複合体を形成する。A:BiFC法の仕組み。蛍光タンパク質VenusのN末端側半分をHd3aに、C末端側半分をGF14cに融合したタンパク質をイネ細胞内で一過的に発現させる。Hd3aとGF14cが相互作用するとVenusが再生され蛍光を検出できる。B:左側はBiFCによるVenusの蛍光を示し、Hd3aとGF14cの複合体は細胞質に局在することが分かる。
図2
図2 Hd3aとGF14cによる開花制御のモデル。GF14cはHd3aを細胞質に隔離することで、Hd3aを介した核内での花成関連遺伝子の発現制御を抑える可能性が考えられる。
研究室HP http://bsw3.naist.jp/simamoto/simamoto.html