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・研究テーマ
海生真菌の細胞生物学 ―多細胞生物進化のモデルとして
 生物の多細胞化は生命進化史上特筆すべき事象です。動物、植物、菌類など、現在の地球上で見られる複雑な生物の多くは多細胞生物です。しかし、どういった遺伝子レベルの変化が生物の多細胞化を誘導したのか、よく分かっていません。
 多細胞生物誕生の仕組みを理解する手がかりとなりうるのは、同じ遺伝情報を持ちながら環境に応じて単細胞性と多細胞性を切り換える可塑的多細胞生物種です。単細胞性から多細胞性へと切り換えるために必要な遺伝子を特定できれば、多細胞生物誕生の仕組みに迫れると考えられます。
 私たちは、菅島近海で採取した黒色酵母種が栄養に応じて単細胞性と多細胞性を切り換えることを発見しました。さらに、遺伝子操作技術の確立を通じて、切り換えに必要な遺伝子経路の一端を明らかにしました。この新しい実験モデル系を使って研究を進めれば、多細胞生物の進化機構の理解を深められるのではないかと考えています。



(図1)
菅島近海で採集された黒色酵母のコロニー



(図2)
菅島近海で採集された黒色酵母の細胞
海藻の細胞生物学 ―巨大単細胞緑藻の研究を中心として
 鳥羽は海苔をはじめとして色々な海藻の産地です。私たちは近海で採取した海藻の細胞レベルでの研究を進めています。海には多様な生物種が生息し、その中には細胞レベルで陸上生物とは大きく異なる特徴を有するものも多くいます。たとえば細胞分裂はすべての生物にとって基盤的な活動ですが、このプロセスにおいてですら海藻では「常識外れ」の様式が存在することが示唆されています。これらを理解する上で、陸上生物のモデル細胞種を用いた研究で得られた知見をそのまま当てはめることはできません。
 現在特に力を入れて研究しているのは緑藻のハネモ(Bryopsis)です。鳥の羽根(フェザー)のような形で10 cmほどに成長する海藻ですが、驚くことに単細胞生物です。細胞分裂を経ずにどのようにして精巧な形態を形成できるのか、とても興味があります。



(図3)
菅島臨海実験所前で採集した海藻



(図4)
菅島臨海実験所前で採集したハネモ