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子育てコラム:  子連れ海外出張体験記 [Part 1]

 

  2015年1月 多元数理科学研究科 
     伊藤 由佳理

 
   現在、私の子どもたちは高校生と小学生高学年になり忘れかけていましたが、この記事を書き進めるうちに、次から次へといろいろな出来事を思い出し、とても長くなってしまいました。私は学生時代から、今しかできないことを精一杯楽しもうと思って過ごしてきました。ここには子どもと海外出張に行った話を書きました。子どもが小さいうちはできないと諦めるのではなく、子どもが小さいから出来ることもあるのです。すぐには役に立たない情報かもしれませんが、いつか、どなたかの、何かの参考になれば幸いです。
 
1.ドイツで妊娠判明
 
     東京都立大学(現在は首都大学東京)の助手になって1年目に、以前から憧れていたドイツ行きが決まり、1年間マンハイム大学で研究に従事しました。ドイツに行ったときは独身でしたが、滞在途中に当時共同研究をしていた人と結婚し、帰国時には妊婦になっていました。夫は京都にいたので、妊娠初期は一人ドイツで過ごしました。フランクフルトまで電車に1時間乗り、日本語の通訳がいる産婦人科で健診を受けていましたが、通訳がいないときもあり、ドイツ人医師とお互い不十分な英語で会話していました。ドイツでは健診のたびに、指先に針を刺して貧血検査を行い、その結果がムッターパスという母子手帳に記録されました。つわりの時期は街中のドイツ料理の臭いが辛かったのですが、安定期に入ると食欲も戻り、ドイツならではのオペラ鑑賞も今のうちに楽しんでおこう!と市内のオペラハウスにもよく行きました。マンハイムはモーツァルトが住んでいたことのある音楽で有名な街で、ワーグナーのニュルンベルグのマイスタージンガー全編の公演は夜中までかかりましたが、とても感動的でした。  宿舎は、同じ大学に滞在中の外国人向けのアパートだったので、いろんな分野のいろんな年齢の人が、いろんな国から来ていました。その中に3歳の娘さんと二人で住んでいる女性研究者がいました。「昼間は保育園があるから、自国にいるときと同じで、別に大変じゃないよ。」と言い、月一回の宿舎の交流会にいつも娘さんと楽しそうに参加していたのがとても印象的でした。
 
     ドイツ滞在最後の8月には、ベルリンでICM(国際数学者会議)がありました。その直前に開催された代数学のサテライトコンファレンスはエッセン大学で、すでにお腹が目立ち始めていましたが、オーガナイザーをされていた女性研究者の指名を受けて、初めての国際研究集会での座長もさせていただきましたし、数少ない女性参加者のうち3名がお腹の大きい妊婦さんというとても珍しいこともありました。ベルリンのICMには、世界中の数学者が集まっていて、特に1年ぶりに会う日本人数学者たちには、会うたびに大きなお腹に驚かれましたが、数学のイベントも、ベルリン観光も思い存分楽しみ、ICMのイベントのモーツァルトのオペラ「魔笛」鑑賞の際には、夜の女王の歌声にお腹の中の子どもが元気よく動いて反応していたのを覚えています。
 
 
  [Part 2] へ続く