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各研究内容

【研究項目 A02:メリステムの機能変換の統御系】

▼研究項目A01:メリステムと器官発生の統御系
班員名・所属 荒木 崇 [ 京都大学大学院生命科学研究科 教授 ]
研究課題名 茎頂メリステムの相転換を調節する統御系の分子基盤
課題番号 19060012
研究目的
植物の後胚発生をになう茎頂メリステムの相転換は、茎頂メリステムから形成された器官(葉や花)によって生成されたシグナル分子が、茎頂メリステムに輸送され、茎頂メリステムで作用することで調節されていると考えられる。栄養成長メリステムから生殖成長メリステムへの転換である花成は相転換の代表的な例であり、長く謎であった花成における長距離作用性シグナル分子の実体はFT遺伝子産物であることがわかった。花成以外の相転換においても成熟器官によって生成された長距離作用性シグナルが関与する可能性が考えられる。

これらを踏まえて、本研究は、花成を中心とした茎頂メリステムの相転換と器官形成が成熟した器官が生成する長距離作用性シグナル分子を介して統合的に調節される過程の分子基盤を明らかにすることを目指す。これまでに申請者は、シロイヌナズナのFT遺伝子とその関連遺伝子(FD, TSF等)の解析を通して花成過程の理解に寄与してきた。特に、長く行き詰まりの状態にあった長距離作用性シグナル分子による花成調節の研究を再興する突破口を開く一翼を担った。本研究はそれらの成果をもとに、長距離作用性シグナル分子による茎頂メリステムの調節機構の研究の先駆けとなることを目指す。
主要論文
Kobayashi, Y., Kaya, H., Goto, K., Iwabuchi, M., and Araki, T. (1999) A pair of related genes with antagonistic roles in mediating flowering signals. Science 286, 1960-1962.

Abe, M., Kobayashi, Y., Yamamoto, S., Daimon, Y., Yamaguchi, A., Ikeda, Y., Ichinoki, H., Notaguchi, M., Goto, K., and Araki, T. (2005) FD, a bZIP protein mediating signals from the floral pathway integrator FT at the shoot apex. Science 309, 1052-1056.

Yamaguchi, A., Kobayashi, Y., Goto, K., Abe, M., and Araki, T. (2005) TWIN SISTER OF FT (TSF) acts as a floral pathway integrator redundantly with FT. Plant Cell Physiol. 46, 1175-1189.
研究室URL http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/labs/plantdevbio/
班員名・所属 島本 功 [ 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科 教授 ]
研究課題名 短日植物イネの開花統御機構
課題番号 19060013
研究目的
我々の研究グループは、短日植物イネの開花統御機構に関して 1.短日植物と長日植物の遺伝子レベルの統御機構の違い および、2.光中断の分子機構 を明らかにした。これらの知見をふまえ本研究では、以下の3つの課題についてイネを用いて研究を展開する。

(1)イネにおけるフロリゲンの機能解明−これまでの研究からFT/Hd3aタンパク質がフロリゲンの分子的実体である可能性が強く示唆されている。そこで、Hd3a-GFP融合遺伝子を発現するイネを用いて詳細なHd3a遺伝子の機能解析を行いイネのフロリゲンの実態に迫る。

(2)イネ開花遺伝子のエピジェネティックな発現統御−イネは長日条件下では多くの遺伝子の発現が抑制されているが、その分子機構はわかっていない。また、開花関連遺伝子の間にもエピジェネティックな相互作用の存在が示唆されている。そこで、開花に対するエピジェネティックな制御の関与を重要な開花遺伝子すべてについて解析する。

(3)光によるイネの開花統御機構−短日植物イネにおいては、光が重要な開花抑制因子であることが最近明らかになってきた。この性質は長日植物では見られないことから短日性を決定する最も大きな因子である可能性が高く、光の役割を徹底して解析する。
主要論文
Hayama, R., Yokoi, S., Tamaki, S., Yano, M., and Shimamoto, K. (2003). Adaptation of photoperiodic control pathways produces short-day flowering in rice. Nature 422, 719-722.

Ishikawa, R., Tamaki, S., Yokoi, S., Inagaki, N., Shinomura, T., Takano, M., and Shimamoto, K. (2005) Suppression of the floral activator gene Hd3a is the principal cause of the night-break effect in rice. Plant Cell 17, 3326-3336.

Tamaki, S., Matsuo, S., Wong H. L.,Yokoi, S., and Shimamoto, K. (2007) Hd3a protein is a mobile flowering signal in rice. Science 316, 1033-1036.
研究室URL http://bsw3.naist.jp/simamoto/simamoto.html
班員名・所属 中村 研三 [ 名古屋大学大学院生命農学研究科 教授 ]
研究課題名 胚性メリステムから栄養メリステムへの転換の統御系
課題番号 19060011
研究目的
シロイヌナズナの胚発生で作られる茎頂と根端のメリステムは、種子の成熟・休眠に至る過程では休止状態にあり、発芽後に栄養メリステムとしての活動を開始する。種子植物では、下等植物が見せる胚発生から連続した発生プログラムの途中に、種子成熟プログラムが挿入されて胚の休眠と栄養貯蔵能が獲得されたと考えられているが、イネ科植物では数枚の葉の分化まで種子成熟プログラムに組み込まれているという変化が見られる。種子の成熟から発芽、栄養生長のプロセスは、ステージ特異的転写因子と植物ホルモンや栄養シグナルによって複雑に制御されており、胚発生から種子成熟の過程を上位で制御するLEC 遺伝子群が良く知られている。しかし、種子成熟プログラムの終止、胚性から栄養メリステムへの転換の制御機構の多くは不明である。我々は、B3 DNA結合ドメインを持つ転写抑制因子、HSI2とHSL1、が発芽後の種子成熟プログラムの抑制、栄養生長への転換に必須の役割を担うことを見出した。本研究ではHSI2,HLS1の機能や作用機構の解析を通して胚性メリステムから栄養メリステムへの転換における遺伝子発現の時空間制御と植物ホルモンや栄養シグナルの情報統御を明らかにし、またEvo-Devoの観点からイネのHSI2, HSL1相同遺伝子の機能を明らかにする。
主要論文
Tsukagoshi, H., Morikami, A., and Nakamura, K. (2007) Two B3 domain transcriptional repressors prevent sugar-inducible expression of seed maturation genes in Arabidopsis seedlings. Proc. Natl. Acad. Sci. USA ,104, 2543-2547.

Inagaki, S., Suzuki, T., Ohto, M., Urawa, H., Horiuchi, T., Nakamura, K., and Morikami, A. (2006) Arabidopsis TEBICHI with helicase and DNA polymerase domains is required for regulated cell division and differentiation in meristem. Plant Cell 18, 879-892.

Tsukagoshi, H., Saijo, T., Shibata, D., Morikami, A., and Nakamura, K. (2005) Analysis of sugar response mutant of Arabidopsis thaliana identified a novel B3 domain protein with the EAR motif that functions as an active transcriptional repressor. Plant Physiol. 138, 675-685.
研究室URL http://tabacum.agr.nagoya-u.ac.jp/
班員名・所属 山本 興太朗 [ 北海道大学大学院理学系研究科 教授 ]
研究課題名 植物ホルモンであるオーキシンによる統御系
課題番号 19060008
研究目的
植物器官間の統御情報因子として最も古くから知られているのは、器官間で極性輸送される植物ホルモン、オーキシンである。オーキシンのシンクとして機能する部位にメリステムが形成されたり(根端メリステム)、器官が形成されること(茎頂メリステム)が分かっているが、オーキシンの下流で働く分子機構は依然不明である。オーキシンの機能の根源は、厳密に調節された時間的、空間的範囲で特定の遺伝子発現を誘導することだと考えられるので、第一にオーキシン信号伝達系のARF-Aux/IAAモジュールが時空間的に調節される仕組みを、胚形成や葉の向背軸形成、胚軸の発達等の現象に即して明らかにする。第二に、Aux/IAAタンパク質と協調して働く因子を同定することを通して、この情報統御機構を明らかにする。
主要論文
Nakamoto, D., Ikeura, A., Asami, T., and Yamamoto, K. T. (2006) Inhibition of brassinosteroid biosynthesis by either a dwarf4 mutation or a brassinosteroid biosynthesis inhibitor rescues defects in tropic responses of hypocotyls in the Arabidopsis mutant, non-phototropic hypocotyl 4. Plant Physiol. 141, 456-464.

Muto, H., Nagao, I., Demura, T., Fukuda, H., Kinjo, M., and Yamamoto, K. T. (2006) Fluorescence cross-correlation analyses of molecular interaction between Aux/IAA protein and protein-protein interaction domain of auxin response factors of Arabidopsis expressed in HeLa cells. Plant Cell Physiol. 47, 1095-1101.

Muto, H., Watahiki, M. K., Nakamoto, D., Kinjo, M., and Yamamoto, K. T. (2007) Specificity and similarity of functions of the Aux/IAA genes in auxin signaling of Arabidopsis revealed by promoter-exchange experiments between MSG2/IAA19, AXR2/IAA3 and SLR/IAA14. Plant Physiol. 144, 187-196.
研究室URL http://bio2.sci.hokudai.ac.jp/bio/keitai1/Welcome.html
班員名・所属 角谷 徹仁 [ 国立遺伝学研究所総合遺伝研究系育種遺伝研究部門 教授 ]
研究課題名 メリステム機能のエピジェネティックな統御系
課題番号 19060014
研究目的
遺伝子発現情報が塩基配列以外の形(染色体蛋白質やDNAの修飾)で細胞分裂後も染色体上に保持される現象が哺乳類から酵母まで真核生物で普遍的に観察される。このような「エピジェネティック」な制御は、多細胞生物の発生過程における遺伝子発現の維持に重要であることが証明されつつある。私達はこれまで、植物の発生におけるエピジェネティックな制御の役割を知るため、DNA低メチル化突然変異体 ddm1 (decreasein DNA methylation 1)を用いてきた。この突然変異は他の遺伝子座を変化させることにより種々の発生異常を誘発する。そのうちの一つである開花時期遅延は、インプリント遺伝子FWAが異所的に発現するgain-of-function型のエピジェネティック変異だった。一方、私達がbonsaiとよぶ発生異常は、節間伸長の阻害と葉序の乱れを示す。遺伝解析の結果、この発生異常は、これまで調べられていない細胞周期制御遺伝子の発現抑制によることがわかった。BONSAI遺伝子によるメリステム制御の機構を知るため、分子遺伝学的なアプローチをとる。この遺伝子の発現抑制に伴い、BONSAI領域をカバーする 低分子量RNAが蓄積する。本研究では、低分子量 RNA形成やクロマチン制御に関与する遺伝子の変異体を材料に用い、この遺伝子の転写抑制にいたる情報統御機構を遺伝的に解剖し、これに関与する因子を同定する。具体的には、それぞれの突然変異体および多重突然変異体のバックグラウンドにおける転写、低分子量RNA、DNAメチル化を解析し、発生異常にいたる経路を明らかにする。さらに、この遺伝子のメチル化を制御する新たな突然変異体を選抜する。これによって、本研究期間内に、この奇妙な発生制御の機構を分子レベルで明らかにする。

当研究室はこれまで、ゲノム構造や染色体挙動の制御に重点をおいた研究を行ってきたが、本特定領域に参加することにより、個体発生、とくにメリステム制御の研究グループとの相互作用により、新たな視点で研究が推進できると考える。本研究の素材は、これまで知られていないタイプのエピジェネティックな発生異常であり、本研究によってメリステム発生制御の新たな経路を見いだせると信じる。
主要論文
Miura, A., Yonebayashi, S., Watanabe, K., Toyama, T., Shimada, H., and Kakutani, T. (2001) Mobilization of transposons by a mutation abolishing full DNA methylation in Arabidopsis. Nature 411, 212-214.

Kinoshita, T., Miura, A., Choi, Y., Kinoshita, Y., Cao, X., Jacobsen, S. E., Fischer, R. L., and Kakutani, T. (2004) One-way control of FWA imprinting in Arabidopsis endosperm by DNA methylation. Science 303, 521-523.

Saze, H., and Kakutani, T. (2007) Heritable epigenetic mutation of a transposon-flanked Arabidopsis gene due to lack of the chromatin-remodeling factor DDM1. EMBO J. (in press)
研究室URL http://www.nig.ac.jp/labs/AgrGen/home-j.html
班員名・所属 松林 嘉克 [ 名古屋大学大学院生命農学研究科 准教授 ]
研究課題名 分泌因子および受容体キナーゼを介した情報伝達機構
課題番号 19060010
研究目的
分泌因子および特異的受容体を介した情報伝達は、多細胞生物の形態形成や環境応答における細胞間相互作用に必須のメカニズムであるが、植物ではその研究例は極めて少ない。これまでに我々は分泌型ペプチドであるファイトスルフォカイン(PSK)がLRR型受容体キナーゼのひとつであるPSK受容体(PSKR1)を介して、植物の細胞増殖ポテンシャルの向上および細胞老化の抑制に関与していることを明らかにしてきた。PSKはPSKR1の細胞外領域に存在するisland domainの前半15アミノ酸領域にnMレベルの結合定数で結合し、この結合にはPSKR1の細胞内キナーゼ領域は必要ではない。これは、植物において初めて生化学レベルで明らかにされたペプチド性リガンドとLRR型受容体を介した情報伝達系である。

本特定領域研究では、この強固で特異的なリガンド-受容体相互作用に着目し、生化学的なアプローチで新たなリガンド-受容体ペアの同定を行なうための方法論を確立する。我々はPSKR1をモデルとした検討により、細胞内キナーゼ領域をタグに置換し、これを介して固相に固定化してもリガンド結合能が完全に維持されることを見出している。この手法を用い、リガンド未知のLRR型受容体キナーゼを網羅的に発現・固定化した受容体アレイを作製する。並行して、任意のリガンド候補遺伝子について、その過剰発現株の培地から成熟型リガンドを系統的に検出・同定する系(分泌型ペプチドミクス)を確立し、これらを組み合わせて新たなリガンド-受容体ペアを同定していく。また、固定化受容体カラムを用いて対応するリガンドを直接的に捕捉する手法(リガンドフィッシング)も確立する。これらの解析から得られる分子群を基軸として、植物の形態形成・環境応答を支える新たな情報統御系の発見を目指す。
主要論文
Matsubayashi, Y., Ogawa, M., Morita, A., and Sakagami, Y. (2002) An LRR receptor kinase involved in perception of a peptide plant hormone, phytosulfokine. Science 296, 1470-1472.

Matsubayashi, Y., Ogawa, M., Kihara, H., Niwa, M., and Sakagami, Y. (2006) Disruption and overexpression of Arabidopsis phytosulfokine receptor gene affects cellular longevity and potential for growth. Plant Physiol. 142, 45-53.

Shinohara, H., and Matsubayashi, Y. (2007) Functional immobilization of plant receptor-like kinase onto microbeads towards receptor array construction and receptor-based ligand fishing. Plant J. (in press)
研究室URL http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~bioact/index.html
班員名・所属 福田 裕穂 [ 東京大学大学院理学系研究科 教授 ]
研究課題名 情報統御分子の伝搬器官としての維管束系の分化
課題番号 19060009
研究目的
維管束はメリステムと植物諸器官を結び、養分のみ成らず情報の伝達を行う。 また、維管束はメリステムと呼応して形成され、双方向での影響を与え合う。

これまでに私たちは、維管束の連続性の促進因子として アラビノガラクタ ンタンパク質xylogen、管状要素分化の阻害 因子として12個のアミノ酸からな るTDIFペプチド、また、維管 束連続性に関わる細胞内のシグナル伝達として小胞輸送に関連するVAN3タンパク質、管状要素分化のマスター遺伝子として VND転写因子 群、維管束幹細胞から木部細胞への分化のトリガーとなるブラ シノステロイドなどを単離同定してきた。興味深いことに、 これらの因子の多くはメリステム形成あるいはメリステム機能と関連していた。

本研究においては、これら因子の機能と相互の関係を分子レベルで明らかに することにより、メリステムと関連した維管束系の形成機構の解明を目指す。
主要論文
Motose, H., Sugiyama, M., and Fukuda ,H. (2004) A proteoglycan mediates inductive interaction during plant vascular development. Nature 429, 873-878.

Ito, Y., Nakanomyo, I., Motose, H., Iwamoto, K., Sawa, S., Dohmae, N., and Fukuda, H. (2006) Dodeca-CLE peptides as suppressors of plant stem cell differentiation. Science.313, 842-845.

Kondo, T., Sawa, S., Kinoshita, A., Mizuno, S., Kakimoto, T., Fukuda, H., and Sakagami Y. (2006) A plant peptide encoded by CLV3 identified by in situ MALDI-TOF MS analysis. Science 313, 845-848.
研究室URL http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/seigyo/lab.html
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