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子育て単身赴任教員ネットワークのメンバーの生活の様子を紹介しています。
 

子育てコラム: 大変だけど、笑っちゃう [Part 3]

 

  2013年11月 工学研究科 田川美穂
 
  5.最少被害留瞬時判断能力
(さいしょうひがいとどめしゅんじはんだんのうりょく)
 
 これは私が作った造語だが、子育てしているとこの‘最少被害留瞬時判断能力’が必要であるとつくづく感じる。そして、それは日々鍛えられて行く。‘被害’が何を指すかは、子育て経験者ならばすぐに理解していただけるだろう。つまり、被害の拡散を最小に留めるためにはどう行動したら良いか、瞬時に判断しなければならない状況に置かれることが多々あるのだ。
 
  その黄色い軌跡は布団を抜け出して、その先は床の色と同化して見えない・・・。そしてその軌跡を作ったと思われる息子は台所にいる!途中でおもちゃ箱を経由しておもちゃをばら撒いてからやってきたようだ。今朝はご飯を炊いていないはずなのに、部屋中ご飯の炊ける香ばしい匂い。足元まで擦り這いで来た息子を抱き上げて、思わず悲鳴を上げてしまった。おしっこたっぷりのおむつをしたまま、うつ伏せでうんちしたのだろう。おむつから漏れたウンチが吸収しきれなかったおしっこで伸ばされて胸まで上がってきて、前面が真黄色!その場で息子の服とおむつを外し、胸から下をジャブジャブと洗った。そして子供二人を隣の部屋へ置き、息子が通ったと思われる場所を慌てて雑巾がけ。黄色い軌跡の付いた布団三枚のシーツを外し、風呂場で軌跡の部分を手洗いしてから全自動洗濯乾燥機へ。隣の部屋に置いてもすぐやって来てしまうので、床掃除している間もまとわりつく。少々の残留は気にしないことにしないとやって行けない。
 
  新学期、娘の保育園イヤイヤが酷かった。弟が生まれてママにべったりしたい、離れたくないのに加え、新しいクラス環境に慣れないのだ。毎朝泣きじゃくってぐずるだけでなく、体調不良も続いた。息子の方も保育園に入園できたのは良かったが、次々と病気をもらってくる。新学期は、娘も息子も原因不明の湿疹とお腹の不調が続き、生活して行くだけでもギリギリの状態だった。
 
  朝起きて、息子がお腹を下した。シャワーで洗ってあげようと脱がせていると、今度は娘が下した。二人をシャワーで洗い、居間へ連れて行って拭いていると、バスタオルにくるんだ息子がまた下した。今度は私の下半身にもかかってしまった。そして更に悪いことに、裸で走り回っていた娘が床に垂れたソレを踏んで走り去り、「踏んじゃったよー。」と言いながらその足を布団で拭こうと隣の部屋へ歩いて行く。「こっち来なさい!歩き回らないで!」と言ってもきかない娘。太腿から垂れているから、自分自身が移動できない。隣の部屋へ行かせないように必死に話術で操ろうとするが来ない。「お化け来るからママの所に来なさい!」(これは駄目)、「お風呂でシャボン玉しよう!」(これが正解)。息子を抱いて、娘を携え、太腿にかかった汚物がなるべく垂れないよう中腰で浴室へ向かう。三人でシャワーを浴び、息子をベビーバスに寝かせる。娘は浴槽に入れる(息子をいじってしまうため)。その間に目にも止まらぬ速さで自分だけ浴室を出、雑巾で部屋の掃除。全身を真っ赤にして泣きじゃくる息子をそのままにはできず、また娘も這い出してきてしまうため、途中からは息子を左手に抱えながら雑巾がけ。とりあえず被害拡散は留められたが、三人ともびしょびしょのまま出て来てしまったので、部屋中びしょびしょだ。そして息子が三回目の下痢・・・。
 
  こんな感じで、エンドレスなのだ。なかなか保育園へ行けない。やっとのことで準備ができて、娘に朝ご飯のパンを握らせながらやっとのことで登園できた時には、保育士さんの前で思わず母は泣いてしまった。しかし、SOSを出すことも大事。息子のクラスの担任の先生が園長先生に相談して下さり、次の日から園長先生が毎朝我家に迎えに来てくれることになった。そして息子だけ先に連れて行って下さる。ママを独占できる時間ができた娘は機嫌を直し、一緒に朝ご飯を食べた後はご機嫌で出掛けられるようになった。

6.大変だけど楽しい

  子育てと研究の両立は確かに大変である。でも、「大変大変」と言いながらも子供はかわいいし、研究は楽しいし、両方を手に入れられた自分は幸せだと思っている。落ち込んだことは何度もあるが、イライラしたことは一度もない。研究も子育ても、日々発見。創造力を養うためにも、両方とも手放すことができない要素である。
 
  まだまだ大変であることには変わりないが、最近自分自身に心の余裕ができたと感じている。収集がつかずメチャクチャな状況になってしまった時、もう笑うしかない!といった感じで親子でゲラゲラ大笑いしたりしている。
 
  先日は、入浴後に息子をタオルで拭いているとき、息子がウンチをして再びシャワーを浴びた。浴びて出てくると、どこかの街角で見た風景。あれ?ここはベルギーか???娘が素っ裸で椅子の上に立ち、かの有名な像と同じ事をしているのだ!「トイレでやりなさい!」と叱りながらも、噴き出して笑ってしまった。椅子に上って何かをやろうと夢中になっていたら、思わず出てしまったようだ。「ストップ!ストップ!」と言っても途中で止められるわけがなく・・・。
 
  心の余裕ができたのも、夫が日本のポジションに移ってくれたことが大きい。新幹線で二時間は遠いと言えば遠いが、NYに比べたら時差もないし、なんてことない距離だ。ほぼ毎週末名古屋へ来て、子供と遊び、作り置きなどをしてくれる。私の方も、週末になれば夫が助けてくれるという安心感があるからこそ、平日楽しく頑張れるのだ。
 
  また、女性同士、あるいは理解ある男性も、困ったら助けてくれるという名大や名古屋の雰囲気が何よりも大きな助けになっている。困ったときはSOSを発する、ご厚意は遠慮せずに受け入れる、という姿勢が単身子育てを乗り切るコツだと思っている。
 
 
  [付録] へ続く