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PCR 産物をクローニングする

Mizuno T.: 2002.05.02

Fusion protein, transgenic などの Plasmid construction に応用する。

Summary

  1. Pyrobest で DNA を増幅する
  2. PCR 産物をエタ沈する
  3. PNK で DNA 末端をリン酸化する
  4. 電気泳動し QIAEX II で断片を切り出す
  5. Ligation high でライゲーションする
  6. カルシウム法大腸菌に形質転換する
  7. アルカリ法でプラスミドをミニプレップする
  8. プラスミドを制限処理する
  9. シーケンシングにより変異が起きていないことを確認する

Pyrobest DNA polymeraseを用いたPCR

Pyrobest DNA polymerase の特徴

  1. 正確性が高い(Ex TaqやLA Taqは1/100~1/1000の確率でmutationが入るが、Pyrobestではほとんど入らない)。
  2. 増幅効率が低い(Taqでは、extension timeは1min/1kbで十分であるが、Pyrobestでは足りないかも)。
  3. Over-hungがない(Taqでは、productの末端に鋳型非依存的に一塩基の付加が起こるが、Pyrobestでは起こらない)。

手順

  1. サーマルサイクラーの電源を入れる。 下記の温度時間条件を入力しておく。

  2. 試薬を混ぜる。 試薬を混ぜる順番は、一般的にwater、buffer、enzymeの順番で(これはどんな実験にも適応される)。 まず何種類反応させるかを計算し、その数+1〜2本分のpre-mixを作製する。

    以下は1サンプル当たりの容量

    10xBuffer	5 ul
    dNTP		4 ul
    templete	
    primer1(5mM)	5 ul (10 mMを2.5 ulや、2 mMを12.5 ulでもよい)
    primer2(5mM)	5 ul
    Pyrobest	0.25 ml
    Water		30 ul(全体量50 ulになるように加える)
    
  3. templeteとprimerをあらかじめ入れておいた専用チューブにpre-mixを加え、ピペッティングによって混ぜる。 念のために専用遠心機でスピンダウンする。

  4. チューブをサーマルサイクラーにセットする。

  5. 94℃ 15sec
    55℃ 30sec
    70℃ 1min/1kb (5kbであれば5min)
    これを30サイクル行い、終了後、4℃保存
  6. 電気泳動で増幅を確認する。

Tips

PCR productのエタノール沈澱

  1. PCR productを1.5 mlチューブに移し、以下を加える。

    PCR product	A ul
    3M NaOAc	A/10 ul
    EtOH		3A ul
    
  2. vortexで良く混ぜる。

  3. -20℃、20min (この段階で長期保存可能)

  4. 15krpm、4℃、20min

  5. 上清をピペットマンで取り除く。

  6. 適量(沈澱させたときの容量より多めに、5A mlとか)の70%EtOHを沈澱に直接かからないよう静かに加える。

  7. チューブを数回ゆっくりとひっくり返す。

  8. 15krpm、4℃、5min

  9. 上清をピペットマンでよく取り除く。

  10. vacuum dry、2min(沈澱が乾燥していることを確認する)

  11. 16 ulのwaterに溶解する。

DNA末端のリン酸化

Probest PCR product には 5' 末端にリン酸基がない。 Ligationのためには2つのDNA断片の 5' 末端のどちらかにリン酸基が必要である。 そこでpolynucleotide kinase (PNK) 処理を行い、PCR product 5' 末端にリン酸基を付加する。

  1. エタノール沈澱させたPCR productに以下を加える(全てREVCOのother enzymeの箱に入っているはず)。

    10 X PNK buffer	2 ul
    20mM ATP	1 ul
    PNK		1 ul
    
  2. 37℃、30min〜(以前行った時は2時間処理したが30分くらいで大丈夫だと思う)

電気泳動、切り出し

  1. TAKARAの10 X Loading bufferを加える。(applyの際に沈まないと困るので、いつも1/5量くらい加える)。

  2. 0.7%アガロースゲルで電気泳動する。 断片を切り出す場合には、コンタミ防止と切り出し易さを考えて、1レーン置きに泳動している。 また、泳動槽は洗浄し、泳動バッファーは交換する。

  3. dyeがゲルの2/3まで流れたら、泳動を終了させる。

  4. ゲルをEtBr槽に入れて、軽く浸透する。 EtBr槽についても洗浄し、液を新しくする。 液の作り方は、まず容器の半分くらいまで超純水を入れ、そこに泳動コーナーの戸棚に入っている高濃度のEtBrを数十マイクロリッター加える(液がかすかに染まる程度入れる)。 EtBrは変異原なので注意すること。

  5. 10min(この間にゲルから切り出す準備をする)

  6. 手袋をして、ゲルをサランラップの上に取り出す。 電気を消す。 防護マスクをかぶる。 ゲルから目的の断片を切り出す(なるべく小さく切り出す)。 切り出したものを1.5mlチューブに入れる。 切り出し終わった後のゲルは捨てる前に写真を撮影しておく。

  7. ゲルの入ったチューブとゲルの入っていないチューブの重さをはかり、ゲルの重さを調べる。

  8. これ以降はQIAEXIIの説明書に従う。 ただし、最終的に20 ulのwaterに溶解する。

Ligation

  1. REVCOに入っているTOYOBO Ligation Highを溶解する。

  2. 以下のサンプルを調合する。 要するに、vectorとinsertの両方に依存しているかを調べる。 QIAEXIIで精製した断片は、ビーズが残存していると良くないので、使用前に遠心すること。

     vector 1 ul+insert 5 ul+Ligation High 4 ul
     vector 1 ul+water  5 ul+Ligation High 4 ul
     water  1 ul+insert 5 ul+Ligation High 4 ul
    
  3. 16℃(室温でもかまわない)、overnight

self ligationの場合はDNA 1 ul+water 5 ul+Ligation High 4 ulでやって下さい。 あと注意点としては、PCRのtempleteがコンタミしている可能性があるので、DNA 1 ul+water 9 ulというコントロールを行って下さい。

Pyrobest DNA polymeraseを用いたPCRのproductのcloning用に、pBSKのEcoRV-digestion and BAP-treatment を用意しておく。

Transformation

  1. ディープフリーザーに入っているコンピテントセルXL-1 blueを室温で溶解する。 1サンプル当たり100ml必要である。

  2. ligation反応後サンプルをスピンダウンする。 基本的に、小型遠心機で遠心できるチューブはふたをあける前にスピンダウンすること。

  3. コンピテントセルを100ml加え、ピペッティングもしくはタッピングで良く混ぜた後、氷上に15分置く。 残ったコンピテントセルは捨てるか、単なるプラスミドのtransformationに使う。

  4. 42℃、40秒〜1分、ヒートショック

  5. 氷上に戻す。

  6. LBを1ml加え、数回ひっくり返し混ぜる。

  7. 37℃、30分(インキュベーターに入れるか、ストック箱に入れてシェーカーに入れる)

  8. 4krpm、室温、3分で遠心し、菌体を沈澱させる。

  9. 上清をデカントで軽く捨てる(100mlくらい液が残るようにする)

  10. 菌体をピペティングで溶解する。

  11. LB-amp plateに全量をまく。

  12. スプレッターはまず縦方向にのみ動かし、その後、横方向に動かす。 ここでのポイントは不均一に広げることであり、そうするとtransformantが大量に出現した場合でも、single colonyをpick upすることができる。

  13. 37℃、overnight、もしくは、30℃、2overnight

これはligationサンプルのtransformationであり、単にプラスミドをtransformationする場合にこの方法で行うと大量にtransformantが出現してしまう。 それを回避するために次のように行う。 1、使い回しのコンピテントセルを使用し、2、コンピテントセルの量を少なめにし、3、recoveryせずに少量(数マイクロ)まく。 要するに雑に行えば良い。

mini-prep of plasmid (alkaline)

ミニプレマシーンで行うのであれば、ファイル2か3で行い、乾燥(vacuum dry)と溶解は自分で行う。 注意点は、きちんと乾燥させることと、溶解に用いるTEはRNAの入っていないものにすること(マシーンで行えば、RNAは除去されている)。

多分マシーンの方がきれいに回収できるし、楽ちん。以下に手で行う方法を記す。

Materials

  1. LB
  2. amp(50mg/ml)
  3. solution1
  4. solution2
  5. solution3

作り方はMolecular Cloningに書いてあると思う。注意点は、ampは-20℃ で凍らせておくことと、solution2は数週間経ったら新しく作りなおすこ と。solution2は、水、アルカリ、SDSの順でいれ、アルカリを入れた後、 SDSを入れる前に、きちんと混ぜないと、SDSを入れたときに沈殿ができる。 LB/amp(50ug/ml)は毎回作るのは面倒なので、作って4℃に保存している。 長く置いておくとampが効かなくなるかもしれないので、1月以内に使って いる。(1月というのも根拠はなく、気分の問題かも。)

Method

  1. シングルコロニーを2mlのLB/amp(50ug/ml)に植菌する。入れ物は試験管もしく は使い捨てのプラスチックチューブを使う。

  2. 37℃で一晩振盪培養。

  3. 培養液を1.5mlチューブに移す(入るだけ入れる)。

  4. 15krpm、4℃(あまり気にしていない)、1min。

  5. 上清をデカントで出来るだけ捨てる。

  6. petを100ulのSolution1にボルテックスで溶かす。

  7. 200ulのSolution2を加え、4、5回ひっくり返して混ぜる。この操作によって、大腸菌の細胞膜が壊れ、菌体内のプラスミドが外に出てくる。激しく振りすぎると、細胞膜にくっついている大腸菌のゲノムDNAが出てきてしまうので良くない。この操作から9番の操作までは5分以内でやること。そうしないとプラスミドがアルカリによって変性してしまい、精製後の処理が効きにくくなる(制限酵素で切れにくくなるなど)。

  8. 蓋を開けると、アルカリとSDSで大腸菌の細胞膜が壊れて、蛋白質が溶出したために、糸を引いている。

  9. 150ulの5M KoAcを加え、再度4、5回ひっくり返して混ぜる。この操作によって、pHが中性に戻り、膜や蛋白質が塩析する(白い塊が見えるようになる)。

  10. 15krpm、4℃、10〜15min(時間は気分次第)

  11. sup400ulを別の1.5mlチューブに移す。

  12. supに1ml(2.5倍量)のエタノールを加え、ボルテックスする。

  13. 15krpm、4℃、5min(長く遠心しすぎると余分なものも沈殿するかも)

  14. supをデカントで出来るだけ捨てる。

  15. 1mlの70%エタノールでpetをリンスする。

  16. 15krpm、4℃、1〜5min(時間は気分次第)

  17. supをデカントで出来るだけ捨てる。

  18. 15krpm、4℃、一瞬

  19. supをピッペットマンで捨てる。

  20. バキュームドライ 1min(petが乾燥すればよい。エタノールが残っていると制限酵素で切ったときに切れ残りが生じる。)

  21. petを50ulのTE(1mg/l RNase入り)に溶解する。(mini-prepDNAを溶かすため専用のRNase入りのTEを作っている。このTEを使うことによって、制限酵素で切る度に反応溶液にRNaseを入れる必要がなくなる。RNaseが入っているからといってTEを低温に置いておく必要はないが、あまりに古くなる(数カ月は大丈夫)とRNaseの効き目が悪くなることがある。)

  22. 通常、100ng/ul(X 50ul)のプラスミドが回収できる。

制限酵素によるDNAの切断

  1. 以下のように混ぜる。

    10 X Buffer	4 ul	(使う酵素に応じて変える)
    DNA		2 ul
    Enzyme		0.5 ul	(全体量の1/20を超えないようにする)
    Water	     To 40 ul
    
  2. 37℃、30分〜overnight(通常、water bathで2時間以上行っている) subcloning用vectorを作製する場合には、切断後、(H Bufferを使っているのであれば)サンプルにCIAPを0.5 ul加え、さらに37℃、30分。

  3. TAKARAの10 X Loading bufferを8 ul加え、20 ulを電気泳動する(applyの際に沈まないと困るので、いつも1/5量くらい加える)。 残りはミスした時に備えて、残しておく。 subcloning用vectorを作製する場合には、近接した2レーンに全量を泳動する(その他の注意点は「切り出し」のファイルを見て)。

違う10 X Bufferで切断しないといけない場合は、次のいくつかの方法で行う。

  1. LからMやH、MからHの場合は、塩を至適濃度になるように加える。
  2. エタノール沈澱する。

ただし、enzymeによってはある条件で非特異的な切断が起こってしまうので、気をつけないといけない(カタログなどを確認すること)。

制限処理したプラスミドを電気泳動し、予想した断片がでているか確認する。

Sequence reaction

マシーンでMini-prepしたものをそのまま使っても、かなり(500bpくらい)読むことができるので、QIAEXIIで精製する必要はそれほどない。

DNA濃度は、電気泳動した際に同じような濃さのバンドであれば、1サンプルのみ検定すれば良い。

あとは、キットの説明書に従って行う。