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  • 論文紹介【第10回論文紹介】
  • MYB3R1およびMYB3R4遺伝子の変異は、シロイヌナズナおいて多面的な発生異常とG2/M期特異的遺伝子群の発現の低下を引き起こす

論文紹介

研究代表者

伊藤正樹

所 属 名古屋大学大学院生命農学研究科
著 者

Nozomi Haga, Kosuke Kobayashi, Takamasa Suzuki, Kenichiro Maeo, Minoru Kub, Misato Ohtani, Nobutaka, Mitsuda, Taku Demura, Kenzo Nakamura, Gerd Jürgens, and Masaki Ito
(羽賀望、小林耕介、鈴木孝征、前尾健一郎、久保稔、大谷美沙都、光田展隆、出村拓、中村研三、Gerd Jürgens、伊藤正樹 )

論文題目

Mutations in MYB3R1 and MYB3R4 cause pleiotropic developmental defects and preferential down-regulation of multiple G2/M-specific genes in Arabidopsis thaliana
MYB3R1およびMYB3R4遺伝子の変異は、シロイヌナズナおいて多面的な発生異常とG2/M期特異的遺伝子群の発現の低下を引き起こす)

発表誌

Plant Physiol. 157: 706-717, 2011

要 旨

  Mybドメインに3つのリピートをもつR1R2R3型Mybは、真核生物の細胞周期や分化を制御する重要な転写制御因子であることが知られています。私たちはこれまでに、植物のR1R2R3-MybがMSAエレメントと呼ばれる共通のシスエレメントへの結合を通じて、細胞周期中でG2/M期に特異的な遺伝子の転写を制御していることを示してきました。以前の研究から、シロイヌナズナでは、機能重複した2つのR1R2R3-Myb、すなわちMYB3R1とMYB3R4がKNOLLE遺伝子などの転写活性化を通じて細胞質分裂を正に制御することを明らかにしています。この論文では、myb3r1 myb3r4 二重変異体の詳細な表現型解析とマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行い、MYB3R1とMYB3R4が多様な機能を持つ多くのG2/M期特異的遺伝子の転写を共通に活性化していること、また、細胞伸長や分裂面決定など、細胞周期とは直接関連しない遺伝子の転写制御にも関わっていることが示唆されました。このような機構を通じて、細胞周期が他の細胞プロセスと密接に関連して制御されている可能性が考えられました。

図1.myb3r1 myb3r4二重変異体の表現型
MYB3R1MYB3R4の二つのMyb遺伝子に変異を持つシロイヌナズナでは、花茎の矮性化、芽生えの形態異常、胚発生における分裂パターンの異常など、多面的な異常が生じていた。このような多様な発生異常から、これらのMybはG2/M期遺伝子の他にも、細胞周期制御とは直接関連のない遺伝子も含めて、多様な機能を持つ遺伝子の転写を制御している可能性が示された。
研究室HP