論文紹介

研究代表者

深城 英弘

所 属 神戸大学大学院理学研究科生物学専攻
著 者

Tatsuaki Goh, Hiroyuki Kasahara, Tetsuro Mimura, Yuji Kamiya and Hidehiro Fukaki
(郷達明,笠原博幸,三村徹郎,神谷勇治,深城英弘)

論文題目

Multiple Aux/IAA–ARF modules regulate lateral root formation: the role of Arabidopsis SHY2/IAA3-mediated auxin signaling
(複数のAux/IAA-ARFモジュールが側根形成を制御する:シロイヌナズナSHY2/IAA3を介したオーキシンシグナリングの役割)

発表誌

Phil. Trans. R. Soc. B. 367: 1461-1468 (2012)

要 旨

 シロイヌナズナの側根形成には,植物ホルモンであるオーキシンによって誘導される遺伝子発現が重要であり,Aux/IAAリプレッサータンパク質とオーキシン応答転写因子(ARF)を単位とするモジュールによって制御されています.例えば,SLR/IAA14-ARF7-ARF19モジュールは側根創始細胞の非対称性の確立を制御することが知られています.今回,私たちはSHY2/IAA3の優性変異体アリル(shy2-101)をシロイヌナズナのColumbia系統から新たに単離し,この変異体の側根形成を詳しく解析しました.shy2変異体では側根原基の形成や側根の出現が抑制されますが,それに加えて,側根形成部位の数が著しく増加していました.shy2変異体では内生のオーキシン量が増加していたことから,正常なSHY2/IAA3-ARFsシグナル伝達がオーキシン量の制御に重要であり,それを介して側根形成頻度を調整していると考えられます.また,shy2変異体における側根形成頻度の増加は,SLR/IAA14-ARF7-ARF19モジュールに依存して誘導されることがわかりました.これらの結果から,側根形成では複数のAux/IAA-ARFモジュールが互いに協調しながら,オーキシン応答を適切に調節し,側根形成を制御していると考えられます.

図1.shy2変異体では側根形成部位の数が増加する.
図2.shy2変異体の側根形成頻度の増加は,SLR/IAA14-ARF7-ARF19モジュールに依存して誘導される.
研究室HP http://www.research.kobe-u.ac.jp/fsci-fukaki/fukaki/fukaki_laboratory.html